毎年、各社ではHard Landingを減らすために色々な努力をしていました。しかしながら永遠の課題でした。昔、YS-11はHard/Strong Landlngが多かったかも知れません。しかし、お客様の不平・苦情もあまり届かず問題にならなかったようです。しかし、現在はDigital式のFDRの解析も早く、CAの腰痛発生、機長の自己申告、又、スマホを使用したお客様の苦情も早く届くようです。

古い話ですが、私の義弟が香港駐在中同じマンションで親しくなった銀行員の方は、最初JALを使っていたそうですが、酷い着陸が多いのでCathey航空に変えたそうです。

旧香港空港のRWY13は慣れないと難しかった様です。Cathey航空にとってはホームベースでもありスムーズな着陸も多いでしょう。逆に羽田空港旧RWY15のCircling Approach では外国のエアラインがモノレールをオーバーして、時にはGo Aroundすることも有りました。しかし、慣れないからと言い訳は出来ません。これでは全社一丸となってサービス闘争をしても無駄になってしまいます。

Hard Landlngには大きく3つの原因が有ります。

意識(自覚)、知識、技量です。この原因を検討して対策を立てる必要があります。

1.Pilotの意識(自覚)不足については次の理由が有ります。①着陸の良否が、料金を払っ戴いたお客様に対しての商品であると言う自覚が薄い。滑走路の長さは有限だからSmooth LandingよりFirm Landingの方が安全だと言う意識がテクニックの向上を妨げている

②上記に関連して、FOに操縦させる時のCaptainの自覚の問題です。機長のネームプレートを表示する事はなくなったが、Captainには乗務する便の責任が有るのです。例えFOに操縦させていても、お客様に自分が見られていると言う自覚を常に忘れてはいけないのです。昔IASCO(Pilot /FEの派遣会社 )のCaptainはHard Landingが少なかった様です。中南米とか後進国のPilotが来るようになってからは大分変りましたが!彼らはたとえCockpit Doorが開いていなくとも、お客様に見られていると言う自覚が強いからだと思います。Standing Obationを待っていたのです。Runwayが長ければ、Powerを残して接地点を無視してでもNo Shock Landingを求めていました。その頃TDAのCaptainはRWYの長さに関わらず接地点を重視する人、年配のCaptainの中には「もう年だから粘る気力はないよ」等と言う人もいました。DC-9が導入されるとますます接地点が重視され、強いショッ クで着陸してもFirm Landingだと気にしない人が増えてきました。又、初めてのFOに最初から離陸を任せ、最後まで手を出さない太っ腹なCaptainもいました。その結果が花巻 空港の炎上事故でした。自信過剰なCaptainと新人FOの組み合わせでした。時には2度もGo Aroundした人がいました。 又、生意気なFOで離着陸をさせないCaptainに対して不貞腐れる人もいました。

 

FOの技量を正しく認識し、事前のBriefingとTimelyなAdviseがとても重要です。常にTake Over出来る態勢でいなければなりません。しかし、指導層のCaptainでもTake Overの限界が分かっていないと思います。ジェット機はThreshold(滑走路端)以降 Slot(許容範囲)から逸脱したら、余程運が良くない限りLandingは失敗するでしょう。Powerの応答も舵の効きも時間がかかります。機体の動きからSlotを逸脱する前に適切な操作をAssistするか、煩いと思われようが口で指導するべきなのです。毎回接地寸前にFlareの代わりに Powerを出して沈みを止める神業を持つCaptainならば可能ですが!!そう言うCaptainは一人だけでした。

次に知識の問題です。JAL「Flight Safety Report」にはHard Landingには4種類の原因が有ると分析しています。勿論複合的に起こることも多いでしょう。

① Power不足

・Threshold通過時、所定のPowerが入っておらず、Flareをしようとしたが減速が大きくSink Rateが増大しHard Landingになる。

・Auto Thottleを切る時に確実にEPR/N1を確認できないことも多い。

・向かい風が10kt以上の時、FOが知識不足で20ftでPowerを絞ってしまう事もある。

・地形によるUp Washに騙されPowerを絞り過ぎることも原因。千歳空港RWY01で空港敷地の境界に高い原始林が有り、向かい風が強い時は Thresholdから 200ft位で強い上昇気流が発生しPowerを絞ってしまい、RWY上に入りFlare開始後上昇気流が無くなり、且つ地上の摩擦で向かい風成分が減少しIAS(対気速度)が減少してしまう。これも知識不足。

②  過大なDescent Rate

・Non Precision Approach(非精密進入)、Visual Approach、又は、夜間に於ける進入時 に見えた時はすでに高く、無理に突込みSink Rateの処理に遅れHard Landingになる。

・旧香港空港RWY13にIGSにより進入し、旋回開始地点でAlign(正対)しようとしたが横風のため手間取り降下率の維持を忘れて高くなり突込み、Sink Rateが過大なままFlareしたが間に合わずHard Landingになる。Over Touch Downとなり海に突っ込んだB747も有りました。海中に浮かぶような写真が忘れられません!

③ Flareの遅れ

・30ft前後からのFlareのタイミングを失する事も多いでしょう。Head Wind15kt以上の時、地面の摩擦でIASが急減します。この時機首だけ上がり車輪は地面に急激に近づき強い衝撃で接地する。そして、接地後大きくBoundするでしょう。

・Powerが有ってもFOの操縦で20ft以下でFlare開始されては絶対にTake Over出来ません。  

④  Flareの不足

・気流その他の理由でSpeedが予想以上に減っていたため、FlareしてもPitchが上がらない。

・PAPIの位置とFixed Distance Markerの関係の理解・認識が不足している。PAPIの位置が1500ft以上奥にありFixed Distance Marker(所謂絆創膏)を意識して一瞬Flareを止めてしまう。羽田空港RWY22は南風が強い時に使用されるので、Powerを残し継続してFlareすべきなのに一瞬でも止めるとSink Rateが再び大きくなり、Flare不足でHard Landingになる。

・同じくLow Visibility(視程が悪い)での進入時、Fixed Distance Markerが見えるとFlare を継続しないことが多い。

・最後にElevatorを引いたが上がらなかったなどの言い訳は通用しません!

以上、大きく4種類に分けていますが複合的に起こるものです。JALもHard Landingに苦労していたようです。しかし、Captain ReportではCaptain自身が失敗を分析して詳細な報告をしているそうです。各種のミーティングでこのリポートが有れば、①PFはCaptainかFOか?②Weather条件は?③風向風速は?④空港は?⑤どういう状況でどの位のショック「G」だったか?⑥反省点と他のPilotへのAdvice等具体的、現実的な参考となるでしょう。

3.技量の問題

これは構造的、根源的な問題であり簡単な対策はありませんが、逃げていては解決できません。この問題は2つに分けられます。機長と副操縦士です。

① 機長については着陸理論が無い、定着していないことが挙げられます。人により機種により全く統一がなされていない。FOに着陸経験をさせるほどの技量が無い!

② 副操縦士については、Auto Pilotの多用が挙げられます。若い20代の時に自分でManual Flight(手動操縦)での操縦と着陸にロマンを感じて欲しいものです。

前回までに① 強いHead Wind/Tail Wind、② 強いCross Wind、③ Turbulence、④ Up Slope/Down Slope RWYについて説明しました。しかし、知識が有っても実際に手動で操縦する経験を積まなければ知識を生かす事はできません。条件の許す限り常”にManual Flightをする/させる環境が必要です。知識が有ってもテクニックが備わっていなければ「絵に描いた餅」です。Pathを守れない、Thrustをコントロール出来ない、横風の修正が出来ない、水平線に対する意識が薄く傾いて接地するようでは論外です。無我夢中で着陸してもどこを修正すべきかはっきりと思い出せないでしょう。これではHard Landing Reportを出して 、地上教育とSimulator訓練を一回実施しても効果は無く全く無駄です。

着陸に自信が有る人も無い人もLanding Techniqueを議論できる環境を作り、各種ミーティングで理論の統一を図り、全体の底上げをして欲しいと思います。「まるで不時着のようだった!」と言われないように!

ジェット機の着陸は基本的に機種の違いは無いと思います。Sink Rate600~750ft/minで降下してきた機体を、ある対地高度(15~40ft)から降下率を約100~150ft/min迄減らすことが着陸です。Head windでは2.5~3.5度Flareし、Tail Windでは約1~1.5度Flareすることは全く同じです。機種により、機体の大きさによりFlare開始高度が若干違います。指導層のPilotは最低2機種の着陸経験があります。機種による違いと言うより言葉は不適当かもしれないが各機種の癖を明確にするだけです。3舵の効きの違い、進入中と接地後のAileron/Spoilerの作動の違いと影響、機体の重さによる影響、機種によるSlat/Flapの違い、機種や ANUの違いによるFlare開始高度とThrust Idleのタイミングの違いを各機種の指導層が集まり意見を出して統一し、正しく教えることが出来れば無風状態でのLanding Techniqueは統一されると思います。そして、各種条件が変わった場合の対応操作を正しく示すことが必要だと思います。指導層の機長が俺の着陸が一番だとか、Captainに昇格したら着陸は全く本人任せではいけません。常に各種のミーティングでHard Landing防止のためではなく、正しい着陸テクニックを議論する環境を作るべきだと思います。その上で強いHeadwind/Tailwind Crosswind、Turbulence、Upslope/Downslope、Slippely RWY、Braking等のテクニックを議論して欲しいと思います。そして、出来る限りManual Flightをする/させる環境を作り、 腰痛を起こさない、飛行機にも人にも優しい着陸を目指して欲しいと思います。