Tail Windとはゴルフで言うフォローの風です。距離を稼ぐにはとても強い味方ですね。しかし、飛行機の着陸にとっては悪い敵です。先ず、着陸速度が向かい風とは逆に風速分早くなります。エネルギーは速度の二乗に比例して大きくなります。と言う事はBrakeやタイヤの損耗が大きくなります。着陸距離も増大します。しかし、どうしてもTail Windでの着陸が必要な時が有ります。20年前まで日本では殆どの機種の制限は10ktでしたが、2002~2003年頃15ktに制限を拡大することになりました。運航の可能性を広げるため機体メーカーも15ktTailの性能表を追加しました。

現実には15ktTailでの運航はそれほどの頻度ではないでしょう。しかし、実際に着陸するにはそれなりの知識が必要です。出来れば1ktでも接地速度を減らしたいものです。

私は実際に15ktの運航をせずに定年を迎えてしまいました。

その頃作った10kt Tailの説明をします。報告されている風は地上の摩擦でほぼ半分になると言われています。10ktの半分は5ktです。5ktはピッチ1度分Sink Rateの減少180~200フィートです。Tail Windが5kt減ると言う事はHead Wind成分が5kt増えると言う事です。全くFlareをしなくとも1度Pitchを上げたことになります。風の減少量を仮定してみます。40ft辺りから徐々に風が弱くなりHead成分に変わります。対地速度は殆ど変化しません。そして、Ground Effect(地面効果)も次第に増加します。通常通り30フィートからFlareしたらFloating(浮き上がり)してしまいます。10ktのTailであれば40ftでPowerをCutした方が良いでしょう。ここでIdleにすれば接地迄若干Ground Speedが減り、接地が伸びずに済みます。Tail Windが5ktならば30ftでIdleです。

Ground Effect、Nose Down Moment、Head Wind Shear(TailからHead成分に変化)等色々な力や揚力の変化が有るが、それに負けず、惑わされず力で抑え込み、20ft Position(Marker750ftの位置)までPAPI横のAiming Pointに向かうのです。そこで1秒以上かけてゆっくり1500ft MarkerへAiming Pointを移動します。これで1度Pitchが上がります。これ以上Pitchを変えず維持します。Ground Effectで1度分、Head Wind成分で1度分で3つの効果を合わせて約3度分550~600ft/min減少して接地出来ます。くれぐれもFlareは遅らせ、Flareし過ぎないように注意します。Aiming Pointを1500ftにしたら、そのPitchをKeepするだけです。そして、通常通り1700~1750ftに接地するでしょう。これは飽くまでも考え方です。Tail Wind LandingはHead Windの様に単純ではありません。Elevatorの効きが良いので Flareが早かったり、強かったり、揚力の増加が多かったりと簡単にLong Touch Down(接地が伸びること)になってしまいます。1.2G位の気持ちでFirm Touch Downすると良いでしょう。

Cross(横風)成分が有る時は絆創膏(Fixed Distance Marker)の先端(1200ft)でDe crabしCenter LineにAlignし1~2度のWing Low(翼を風上側に傾けること)を 確実にKeepして待つだけです。

次に間違いやすい傾向が有ります。ジェット機は翼面荷重が大きくFlap/SlatのDragも大きく、Stabilizeしています。Powerで吊っていると言う表現が有ります。そこで200~100ft付近で若干速度が多いと判断しThrustを絞ったとします。絞りすぎることも多く、必ずPathより下がってしまいます。Thrust Leverのストローク量(操作量)にも慣れていません。対地速度が増えている分降下率も少し大きくなっています。そして気がつかぬ内に降下率が増大し、Flareのタイミングを失しHard Landingの危険性が発生します。逆に思わず急激に引き起こしてFloatingしLong Touch Downになることもあります。Thresholdまでは適宜Stabilizer Trimを巻く(使用する)ことです。小型機から昇格したばかりのFOの陥り易い失敗です。くれぐれもPIC/Captainは注意しましょう。

「Lnding Technique Information」のTailWindの項目で説明しているようなGround Speedが早くなり、Sink Rateが通常よりも大きくなるので高めからFlareを開始すると言う記述は間違いです。経験上高めでPowerをCutする事は有っても高めからFlareする事はありません。これはWeightが増大しVtg( Target Speed )が大きくなるとSink Rateも増えることと混同しているのです。今はもうこのInformationは無いと思いますが!

しかし、Runway上に入ってからThrust Idleとした後に絶対Pathより下がってはいけません。この付近ではGround Effectも発生しているので大きく下がる危険性は少ないが、飽くまでも20ft迄はPathをKeepする事が大事です。大型機は眼高が高く初心者には低高度でPathの低下が分かり難いのでPAPIの2Red/2WhiteをKeepし、20ft/750ft Positionから静かに慎重にFlareするのです。低高度でPowerを少し絞ってもPathをKeep出来るレベルになったら、100ft付近でN1を1~2%絞り一呼吸おいてStabilizer Trimを巻いてPathをKeepし、Over Threshold(上)でVtg(Target Speed)マイナス5ktのVref(Reference Speed 1.3Vs 失速速度の1.3倍  最低進入速度 )を狙うのも良いでしょう。減速が始まればPitchが少しずつ上がり(勿論 Trimで支える )ます。TH上でTrim Stop(これ以降使用してはいけない)です。

Thrust Idleは減速率を判断して行います。このVrefにする操作はDC-9の導入当時、未だVtgの考えが始まっていない時のOperationでした。

又、Short Final(滑走路近くの低高度)で早めに風の変化(Head Wind Shear )が現れる時が有ります。PIREP( Pilot レポート )も参考にして早めの対策も必要でしょう。

15㏏ Tail WindでのLandingはGround Speedが多くなります。以上の知識と操作を以って十分減速し接地点を伸ばさず急ブレーキを避けましょう。