MD82で関西空港-旭川空港往復飛行の話を紹介します。

台風による強風の中、関西空港を出発し旭川空港に到着しました。

運航担当者(Dispacher)の方から、関西空港の風が強くなり雨も降りだしRunway Closeとなったのでこの便を欠航すると言われました。その日は日曜日で年配の方の団体が入っていると言われました。

関西空港と伊丹空港は近距離なのに全く違っており、Rader Echoの動きを見ても、   予報をみても伊丹空港は雨の心配は全くなく、風だけが心配でした。

同じ大阪だから伊丹空港に目的地を変更することに決めました。

VRB200~230/22~gust28ktでした。Steady windもGust windも制限値にギリギリ入っています。チョット風が強くなるとオーバーします。

VRBとはVariableの短縮。200度から230度の間で振れている。Gustは風の息で突風の最大値です。横風制限値は25kt、GustはSteady wind値+10ktだったと思います。

大阪にはYS11とMDシリーズで約10年いました。エアバス機に機種変更し東京に戻り、4年で又、MDシリーズに戻りました。大阪伊丹空港は慣れているし乱気流での着陸は大好きでした。

伊丹空港の風は制限内に保たれそうだしお客さんも多いし、出発を決めました。

往路便で通った通常の日本海側Routeは3時間ほどで大きく変わり、30000ft位の積乱雲のLine Echoが連続し内陸を通るRouteに変更しました。浜松を過ぎる頃Boeing737が風のためGo Arunndして出発地宮崎に引き返したと連絡が有りました。風の情報を聞いても変化がないし、今更羽田空港にDivert(目的地変更)は恥ずかしいしそのまま伊丹に向かいました。「同じ風で出発してきてGo Aroundして戻るなんて軟弱な奴だな」なんてFOに言ったものです。

それから40分位でしたか、運良く進入開始した時は雨は降っておらず、Cloud Base

(雲底高度)も高くCirling Runway 14 周回進入のDown Wind 1500ftを30度WCAをとり290度で飛行しました。

  

 Base Turnを開始しContinue Final Turnで運よくクロネコヤマトの配送センターを正確に回り込みました。 通常は90度で一度Bankを戻しWing Levelにするのですが、南風が強いのでそのまま回り込みました。約700ft、ここまでTurbulenceも殆ど有りませんでした。

しかし、500ft付近からの揺れは経験の無いレベルでした。

上下のジャンピングだけでなく横っ飛びも含めまるで荒馬乗りです。他社便が1時間以上前にこの揺れでGo Aroundして引き返したのだと改めて思いました。

FOに「もう止めませんか?」と言われたが、申し訳ない無いが止める気はありません。Thresholdに入れば絶対にTurbulenceは無くなると言う自信が有りました。

空港敷地内に入れば風は地上を横に流れるだけです。UpwashもDownwashも大きく減ります。有るのは風向・風速の変化だけです。これはHeadwind/Crosswind成分に大きく影響するでしょう。

しかし、1秒2秒で急変するわけも有りません。THから接地までほんの7~8秒です。

しかもFull Flap/ Power On/Wind Additive+10Kt(通常はプラス5Kt)だとANU(接地時のPitchup姿勢)が低くなり、Gustによる左右の揚力差の発生が少なく接地は1度位になります。

Powerを残すと殆ど接地迄速度が減らず、通常5Kt以上減速し1度Pitchを上げる必要が有るがなくなります。

地上の摩擦で風速も半減しShort Finalに比べればものの比ではなくControlできます。

スキ―競技のモーグルと同じです。こぶの有る場所を過ぎれば停止ゾーンの平らな場所になります。こぶに負け腰が引けると転んでしまいます。

私もスキーは得意でないので良く分かります。

そして左足で強く踏んばる右ターンが得意です。

横風着陸も右側からの風が得意です。

ショートファイナルで横風30ktあると、その半分の15度WCAが必要になります。するとCenter Windshield(中央の窓)の縦のフレームが右風だと自分の前のWindshieldが全く視界を遮られる事なく良く見えます。左風の強い時はこのフレームが結構視界を妨げます。

逆の右席での記憶があまりないので視界の問題ではなく利き足なのかもしれません。

揺れを楽しんでいれば最後は平地になることを信じPathを厳守し、絆創膏手前

(1000ft)までCrab Angle(蟹の横這い飛行)を維持し(大分少なくなるが)、若干PositiveにPitchを引き上げ Aiming Pointを1500ftに移動し、少しPitchが上がりSink Rateの減少を感じたら1500ft Markerの上でFull de‐crab one point Wing Lowです。2度がMaxです。接地でThrust Idle、 機軸は完全にAlignします。拍子抜けする程ノーショックでした。MDシリーズは翼端接触が多いので心配されたと思います。

勿論お客様とCAも同じです。

横風制限値25Kt=46300m/hr=12.86/sec=42ft/secとなります。1秒の変化を示しました。しかし、これは平均速度であり横に動き始めても大きく重いジェット機の機体が1~2秒で横っ飛びに動くわけもなく、まして2度のBank(横風10kt補正分)を取るので横移動の加速はもっと少なくなります。横風着陸のTechniqueは別の項で説明します。

余談ですがLanding後ターンをしてTaxiwayに入った処、数機の機体がBoarding Bridgeを離れて風に正対するためにRunway側を向いていました。そして、Spot in後降機するお年寄りのお客様を見て冷静になり、CAも含めて相当恐怖を感じただろうと思いました。又、500ft以下のShort finalでの揺れで機体にどれだけダメージを与えたのか心配になりました。

以上、自慢話を書きましたが、JET機の着陸に興味を持って頂けると思い書いたわけです。しかし、翌日又、時速80㎞の韋駄天のSpeedで移動した同じ台風の接近する旭川空港に行きましたがチョット危ない目に会いました。長くなりましたので次回にします。