話が羽田空港の衝突事故とブレーキ操作に外れてしまいました。

海保機が10秒早くTowerの周波数に変えていたら、JL516に対する着陸許可を聞くことが出来たので静かにC-5上で待っていただろうと思うと残念ですね。

着陸に移りましょう。

 Airbus A300-600R の飛行教官(Flight Instructor)をしている時に偶然気が付きました。

Simulatorの自動着陸(Auto Landing)は約30フィート( ft )で引き起こし(Flare)を開始する迄、Aiming Point/PAPI(侵入角指示灯/ほぼ1250ftの位置にある)に突き刺さるように降下を続けます。4つの灯火が赤赤白白を示しています。

滑走路の端スレッシュホールド(Threshodと言う、以下THとします 高度50ft)に入り約2秒後(高度約30ft、500ft Marking)から目標点Aiming Pointが100ftづつ静かに前方に移動し始め、一定のレイトで約5秒強で1750ft付近に突き刺さるように移動し、その位置に滑らかに接地するのです。滑走路のFar Endは飽くまでも水平を保つだけの参考にします。 そしてANUは約2.5度高く7~7.5度になっているのです。

これは現実です。

車輪(Landing Gear)と操縦席の距離(10m∼15m)、目の高さ(Pilot Eye Height)に関係ないのです。B747ジャンボは3BarのPAPIなので少し違うかもしれないがもう全てRetireしたから関係ないですね。

Power Lever(ジェット機はThrust Leverと言う)はFlare開始後約1秒(高度20ft)で静かにアイドル(Idle)にしています。

これだ!と閃きました。今頃になってこんな事を言うのはおかしいと思うでしょう。

しかし、着陸は感覚が一番だと思っていたのです。人により皆言う事が違うのです。確かにFOの離着陸訓練をさせる時(勿論お客様が搭乗しています)チョット高くなってしまったり、Speedが多くなってしまった時など「I have!」と言って 交代(Take overと言う)してPowerをカット(Idle)して着陸することも有ります。

動物的感覚です。これができるからキャプテンをやっているんだと思っていました。説明はできません。「経験だ!慣れだよ!」と言ったものです。

先輩機長が他社の747ジャンボのSimulatorの経験をした時「高くなったからPower cutして降りたよ。みんな一緒だよ、簡単だった」と言ってました。

滑走路の着陸帯には500ft(約150m)毎に75ft(22.5m)の長さの細いDistance Markerが最初両側3本づつ白く塗られています。1000ft Markingだけは200ft(60m)の長さで幅の広い設置帯標識(Fixed Distance Marker)が左右1本づつ在ります。我々は(大きな)絆創膏と呼んでいました。役立たずで逆に余計なものでした。後で説明します。

滑走路(Runway)の長さ2300mまではThreshodから 500毎に2000ftまで4ヶ所、2400m以上のRunwayには3000ftまで6ヶ所ずつ反対側にも在ります。絆創膏の先は500ft毎に線の数は一本づつ減っていきます。

Symulatorを見ていてはっと気が付きました。Runwayが平らならばThresholdとPAPIの距離は1250ft、 Runway Distance Markerは500ft毎に描かれています。と言う事は各Distance Markerは50ft、30ft、10ft、PAPI横が0ftです。と言う事は丁度5等分されている訳です。

PAPIと絆創膏の先端が50ft差と言う事が微妙ですが無視できる範囲です。

そして、その中間は40ft,20ftになります。機種、機体の大きさに関らず車輪の高さと

考えればよいのです。何故今まで考え付かなかったのか不思議でした。

Pathを守っていればRadio Altitude(電波高度計)通称(RA)は必要なくDistance Markerで判断できるのです。発想の転換です。 

これには前提が有ります。まず先にも説明した通りRunwayが平らである事。そして次に重要な事はThreshold迄Path(進入角度)を正確にKeepできることです。そしてSpeed&ThrustもSlot(許容範囲)の中に入っていることです。

これまでAirline Pilotになるまでの難関を潜り抜けてきているのです。信用したいですね!しかし問題は実運航ではAutopilot(AP)、Auto Throttl(ATS)に頼り切っている事です。そして着陸寸前 Runwayに視点が集中して 300ft以下でATSの実際のThrustを確認せず/否!確認出来ずに切る事が多いようです。それも夜間雨が降っていて気流が悪い時に通常でもHard Landingになるような難しい状況下が多いようです。

そのためにも出来る限りAPに頼らずManual(手動)で操縦し腕を磨いて欲しいですね。

 

約30年前事故が起こりました。オーパイ(AP)とコーパイ(Co-Pi)が喧嘩した、力比べをしたと言われました。中華航空のA300-600Rです。丁度私がFIになったばかりでした。空軍出身のGreat Captainと民間で訓練を受けた新米Co-Piの組み合わせでした。FO(副操縦士)は何も言えません。言われたようにやるだけです。そのコーパイの操縦で、と言ってもオーパイ使用です。 Outer Markerを通過しました。そしてどのタイミングが分かりませんが無意識にThrust Leverの中央付近の内側にある着陸復行(Go Around) Buttonを指で押してしまいました。離陸出力と同じ力が出て急上昇を始めます。Captainは最初何が起こったのか分からなかったでしょう。信じられなかったでしょう。そんな事をするとは夢にも思いません。でも最後まで分かっていなかったようです。オーパイはもうILS精密進入は止めてしまい上昇しようと機首を上げます。 

しかしコーパイは自分の力でPathを守ろうと必死にElevatorを押します。システム上APにある程度の力を加えるとオーパイは切れるのです。人間優先にします。切れると赤いLampが点滅し、警報音が鳴ります 。

しかし、CaptainはAP Switch Lever(長さ約3cm、幅7~8mm位の小さなLever)を上方にホールドしたままだったようです。AP SWは電磁的に保持しているのでホールドしている限り繋がっているのでGo Around Modeのままです。機首を上げようとします。そして、悪いことにオーパイが入っている時は大きなStabilizerの作動音がしないConceptになっていたのです。初めてエアバスが採用したSirent Cockpit思想です。オートパイロットが操縦している時は音を出さずに静かなコクピットにするためです。勿論Pilotが自分の意志で動かしている時は定期的な間隔で鳴ります。この作動音が鳴っていなかったのでCaptainは気が付かなかったのです。そして最大の位置まで動いて止まったのです。これではElevatorがStabilizerに勝てる筈がありませんでした!

ここでコーパイがオーパイに負けたのです。

Elevatorは水平尾翼後部の幅の狭く小さい物です。Stabirizerは水平尾翼全体です。

14.7度位上ったと思います。凄い量です。離陸時前後のWeight& Balanceを計算して最適な位置にSetします。合っていないとElevatorを引いた時に重くて機首が上がらず離陸滑走距離が伸びたり、軽くて引き上げ過ぎTail Skid(尻もち)を起こす危険が有ります。 

通常はElevatorで操縦し、姿勢が決まったらStabilaizerを少し動かして手の力を抜きます。

蛇足ですがこのHorizontal Stabilazer(水平尾翼)の大きさはYS-11(64人乗り)の主翼の燃料タンク容量8700ポンドに比べ12800ポンドも入る大きさです。A300全体の搭載量は12万ポンド(55トン)以上入ります。でもB747その2倍以上ですから凄いですね!

そして離陸から上昇中20000ft過ぎると自動的にMain TankからFuel(燃料)を移送しますMAX4300ポンドだったと思います。そして、降下中21000ft過ぎるとMain Tankに戻します。

巡航中後方を重くするとStabilizerを少し下げ、揚力を発生させ、後方を上げ、機首を下げてBalance を取ります。と言う事はStabilizerが揚力を発生するので、機体全体の揚力が増えるのです。そのおかげで主翼のPitchが低くても良いのです。大きな主翼がほんの少し下がったのでDragが減り燃費が良くなりますです。1~2パーセント向上したようです。よく考えますね。又、それを実現するために当然ンピューターで制御します。エアフランスの乗員&航空機関士組合は、フランスとドイツで主導したコンピューター制御が危険だとしてストを打ち、B747-400から始まった2人乗務にわざわざ航空機関士のためのパネルを設置させ航空機関士に燃料の移送をさせたのです。航空機関士の職を奪わないための作戦だったと思います。エアバス機に反対したかは記憶にありません。

話がそれました。2回失速し上昇降下しました。お客様は怖かったでしょう!

最後に失速したまま運良く(チョット不謹慎な言葉ですが)空港の敷地内に入り機首から地上に突込みました。民家の上に落ちず破片も集中していました。

この数年前A300-600Rの初期型A310(スリーテンと呼ばれていた、古いA300の機体を改良し初めて航空機関士を無くした)が2回同じ状況に陥り無事生還していました。

この中華航空のCaptainはBoeing747のライセンスを持ち同時に2機種を運航していました。アメリカとヨーロッパは思想が違います。台湾はこれを認めていました。

蛇足ですが、アメリカとヨーロッパのヘリコプターは回転方向が逆です。エンジンが停止した時Fullに踏み込む Rudderが逆になります。

Conceptの大きく違う国の飛行機を同時に乗ると勘違いが起きます。

Go Around Modeが切れていないのにElevatorを使えば効くと思ったのでしょう。

自分は操縦桿を握っていないので重さは感じられません。新米コーパイが何しているのかとAP SwitchをHoldしていたのです。

何故Runwayが見えるのにAPをDisengage(切ること)しなかったのか?何か起こったらBasic Modeに戻して考えれば良いのです。そしてAPに頼りすぎない事です。前2回のA310は助かったのです。私もHigh Tech機の最初の機種でしたがエアバス社のConceptは最初戸惑いました。

名古屋空港事故6年前、A32Oの初期から開発に参加したエアフランスの若いエリートキャプテンが、招待飛行でRunway上を低空飛行した後上昇できずそのままRunway先の森に突っ込んでしまいました。

Runwayの上空を100フィートでLanding Gear(車輪)を降ろし低空飛行していました。  

そろそろ上昇しようとThrust Leverを進めたが全くPowerが出ず空港外の15メートル位の森に突っ込んでしまいました。

実はこの機体は初めて納入された3機のうちの1機で、未だ2日しか飛んでいなかったのです。未だ初期故障が出る段階だったのでしょう。そして高度計は誤差が多いと何度も報告されていたが修理されたか、修理したが直らなかったか分かりません。100フィートの筈が70フィートの誤差で実際には30フィート(15メートル)で飛んでいたのです。恐らく電波高度計(RA)が30フィートを示していたと思われるが二人は気が付かなかったのでしょう。電波高度計では高度を保つ水平飛行は出来ません。気圧高度計しか参考になりません。30フィートで車輪が出ている着陸モードではThrust Leverを進めてもThrustが出ないと言うのです。しかし、30フィートでも大きく沈んだ時はPowerを出すことも有ります。それとは一寸違うがある先輩Captainは5フィートくらいで大きくPowerを出してノーショックで接地後Powerを絞る人がいました。とてもタイミングがよく上手いと思いましたが、誰も参考にする人はいませんでしたが! A320ではその先輩Captainはこの操作が出来ませんね!

しかし、恐ろしいことはフランス政府です。ヨーロッパそしてフランスとしてはこのハイテク機をアメリカを抜いて世界に売り出そうとしていたのです。結局自分のミスを認めなかったCaptainは精神異常者として扱われLisenceをはく奪されてしまいました。その約8年後10ケ月の禁固刑(10ケ月の執行猶予)を受けたのち何とか海外のエアラインでは飛べる事が出来、インド航空で飛び始めたそうです。フランスの操縦士組合も彼を守ろうとしませんでした。否、守る事が出来なかったのでしょう。このCaptain Michel Asselineの著した「エアバスA320は何故落ちたかーパイロットのせいか、飛行機のせいか」から紹介しました。

 

定年後20年近く過ぎましたが技術も大分進歩しているでしょう。Pilot席の前には操縦桿は無く、Pilotの窓側にある小さなStickでFly by Wireで電気で動かします。

でも着陸操作のTechniqueは変わりません。常にManual Controlをする/しても良い環境を作って欲しいものです。

 日本は2機種同時乗務は認めず、私も元の機種に戻るのに4ケ月以上かかりました。FOの操縦練習/離着陸経験をするのにAPを使用していたら全く無駄なことです。でもこう言うことが当たり前のようです。操縦技術の向上は全く見込めないでしょう。若い時はどんどん成長できるのに止まってしまいます。

それでは着陸の戻りましょう。

小型機/中型機は30ftからFlareを開始します。そしてThrust Idleは小型機は40ftから

SmoothにIdleにすると良いでしょう。ANUが4度以上の機体(A300は4~4.5度です) やDrag(空気抵抗)が大きい大型機は先にFlareを開始し、1秒後/20ft/750ft の位置からThrustをIdleにすると丁度良いのです。

2~4度の間やBoeing777のようなボーイング系の機体は大型機でもANUが低いのでSlat(主翼前方の高揚力装置)の構造がエアバスと違います。私は経験がありません。しかし、それぞれ丁度良いタイミングを探せば良いのです。アメリカのBoaing製や無くなってしまったがDouglus製は胴体を延長するとTail Skid(尻餅)し易くなるのでFlare角を制限することが多いようです。

昔のプロペラ機は機体が軽くSlatが無く、ANUは0度以下でAND(Aircraft Nose down )でDragが少なかったためFlare開始前からPower Lever(プロペラ機はこう呼んだ)を絞らないと浮き上がってしまいFlareを開始できなかったのです。そして沈みに応じてPowerを絞れと言われたものです。しかし、ANU0度以下から5度上げる醍醐味が有りました。それがジェット機に移るとFlare出来なくなるのです。不思議ですね! Flareしないと生きたSpeed(減速していない状態)で機首(Pitch)を殆ど上げず、Dragの少ない Landingをするので短いRunwayではどうしてもブレーキに頼ります。私の推奨するFlareは減速が大きく接地して静かに機首を降ろしている間に10~15KTも減速します。Flareの醍醐味を楽しむことのできない機種に乗務する事は悲しいことです。ジェット機はFlareを止めたり、予想より急に沈み始めたらRecovery(回復)できないのです。自分の判断で機械的にあるタイミング(機種による高度や目標Speedからの多寡)でIdleにし、Flareに専念する方が良いLandingになるのです。又、Headwind(向い風)が10kt以上有る時は接地後にThrustをIdleにすべきです。向かい風のため着陸速度が遅くなり、地上の摩擦により向い風成分の減少が顕著に出るのでFlareだけで十分です。

以上のように感覚ではなく自分の眼で外部のReference(参考物)を確認して高度を判断すればFlare開始が遅れることは無くなります。電波高度計は参考になりません。特にRunway Slopeがあると役に立ちません。そして1250ftのAiming Pointを1750ftまで5秒掛けて数を数えながら進めて行けば着陸は簡単です。大きな間違いは起こりません。

これまでの説明は基本的な考え方を説明しただけです。次回は図と写真を参考にしてより具体的な操作を説明します。

風の条件(Wind Condition)、滑走路の傾き/Runway Slope  ( Up Slope/Down slope )、強い横風(Strong Croswind)、乱気流(Turbulence)、雪氷滑走路(Snow&Ice Condition )等楽しいLandingが沢山あります。