中山可穂にひき続いて女性作家、小川洋子2連続です。
 
「ミーナの行進」
小川洋子らしい小説だった。会社の経営者である叔父の家に一年間、親元を離れて居候することになった主人公の朋子。一つ年下で小柄な女の子、ミーナと魅力あふれる叔父さん始めその家族と、使用人の二人、そして大切なコビトカバのポチ子の存在。言葉をしゃべるわけでもなく、ただえさを食べて、庭の池を泳いだり、夜行性なので夜に行動したりと普通なんだけど、山火事の夜にひっそりと逝ってしまった時、存在感の大きさはやはりこの家族のかけがえのない一員だったんだな、と改めて気づかされます。
海水浴の時「大丈夫、誰も欠けていない」と安心した主人公ですが、時が経つにつれ変わってしまうという、現実と同じ切なさを感じつつも、病気に負けずに世界で頑張っているミーナの事や、大病をしながらもまだ魅力的な叔父さん、そして母親となった主人公の今やこれからのことを思わせるラストもよかったです。きっと今頃、海外で、ミーナと叔父さん叔母さんと4人で楽しく食事でもしているんじゃないかな、と心がほっくりするお話でした。
 
「薬指の標本」
「ミーナの行進」とは全然違うタイプです。依頼者が希望する物を何でも標本にしてくれる弟子丸氏。前の職場での事故が原因で薬指を少し失ってしまった女性主人公は、弟子丸氏の元で勤務を始める。途中色々なものを標本として受け付けるが、最後に自分の薬指を標本にしてもらうために、弟子丸氏から断られていた標本室のドアを叩くところで話しは終わり。でも試験管の中から見る弟子丸氏…という表現があるので、薬指だけでなく、自分を全て標本として愛する弟子丸氏に捧げたい、ということなんだろう。前に努めていた女性も突然になくなったということだったが、きっと標本になっているんだろうな、というなんか不思議な話でした。
もう一編は、六角形の部屋にまつわる話しで、この部屋に一人で入り自分の語りたいことを気が済むまで語るというもの。だけど、この部屋は全国を旅していていつかはいなくなってしまう。始めは半信半疑だった主人公も段々と部屋の、そしてこの部屋の番人である親子に魅力を感じてくるようになる。で、ついに。部屋はどこかの町へと引っ越してしまう。
両方の話しに共通するかもしれないが、何というか寝入り際に見た夢みたいな感じを持った。現実には起こりっこないんだけど、夢の中ではそうなるのが当然というか、そんな不思議な二つのお話が載っている小説でした。
 
小川洋子、良いな…。博士の愛した数式ももう一度読んでみたくなった。でもその前に今度は山本一力の「粗茶を一服」を読もうと思う。昔々、この人の「あかね雲」を読んで猛烈に感動したことを覚えているが、次に読んだ「銀捨離(だったかな?)」は何か二番煎じに感じられてそれ以来、この作家の本は読んでいない。あれから時間も大分経ったが、果たしてどんなものか…。