特定健診・特定保健指導制度で本格化-電機・情報各社、対策に自ら“汗” | 魚釣り用ボクサーパンツ

特定健診・特定保健指導制度で本格化-電機・情報各社、対策に自ら“汗”

 連日の猛暑―。疲れは徐々に蓄積されていくだけに、日ごろの体調管理を怠るわけにはいかない。注意しなければならないのは夏バテや熱中症だけではない。4月に特定健診・特定保健指導制度が始まり、メタボリック(内臓脂肪型肥満)症候群への気配りがより重要となっている。電機・情報サービス各社は健康管理にITの活用を推奨する一方で、“脱メタボ”対策で自ら汗をかく。各社の取り組みを探った。(編集委員・斎藤実、土井俊、水嶋真人)


 アメとムチ―。特定健診・保健指導制度では、厚生労働省に対して指導実績や成果を報告する義務がある。(1)健診実施率(2)保健指導実施率(3)有病者・予備群の減少率―の達成度合いによって、2013年から後期高齢者医療制度支援金の負担率がプラスマイナス10%増減する。つまり、きちんとした成果を示せるか否かで負担率で最大20%の差がつくことになる。この“アメとムチ”策については議論が渦巻くが、今後、社員の健康管理を経営問題としてとらえる風潮が強まるのは間違いない。


 メタボ対策で病院に通う管理職が人知れず増えている。もっとも、通院する人はメタボ改善の意思がある前向きなタイプ。手を焼くのは健康診断で異常が出ても病院に行かないタイプだ。健康上に問題があっても何もしない人も少なくない。こういった人たちを含め「病気の予防から治療、フォローまで、横ぐしを通したビジネススキームが必要」と話すのは、齋藤稔ベストライフ・プロモーション(川崎市中原区)社長。


 ベストライフ・プロモーションは富士通の社内ベンチャーとして07年2月に創業。本業はITを活用した健康増進管理などだが、“隗より始めよ”と、富士通グループの健康管理にも貢献する。07年10―12月には富士通健康保険組合などとともに国の実証実験に参加した。この実験では富士通の従業員ら約260人に健康増進サービスを提供し、健康データの変化を調べた。


 「これが昔の私です。だいぶスッキリしたでしょう」と、首に下げた社員証を見せる齋藤社長。社員証の写真と目の前にいる人物はまるで別人。実は、齋藤社長も実験に参加し、107・5キログラムだった体重を約10カ月で16キログラム減らすことに成功した。


 実験では、性格に合わせた指導プログラムを用意。体重や血圧などの変化を見ながら、効果的なアドバイスを試みた。齋藤社長が受けた主なアドバイスは(1)口の中でモノがなくなるまでかむ(2)食べたくなったら、3分間考えごとをする(3)一口食べたら箸(はし)を置く―の三つ。特別なダイエットをしたわけではなく、実験が終了した後も「保健指導に従って、生活習慣を改めたり、万歩計を持って日々歩いたりした効果」(齋藤社長)という。


 実験の成果はまちまちだったが、「のべつ幕なし同じことを言っても効果は出ない」「インターネット好きの人は理屈で分からせないと動かない」など、自ら実験に参加してみて「タイプ別の対処法やアドバイスを出す効果的なタイミングなどの検証に役立った」(同)という。齋藤社長が目指すのは、特定健診・保健指導制度の枠を越え、多様な健康情報を横断的に扱う総合サービス。個人の健康情報を網羅したデータベース(DB)「パーソナルヘルスDB」の構築・普及に夢を描く。



 【日立】


 ビリーズブートキャンプとは逆の発想―。日立製作所中央研究所(東京都国分寺市)が開発を進めるウェブ型ダイエットシステム「はらすまダイエット」の基本方針は「頑張らないけれど長く続くダイエット」。7日間集中ダイエットをうたい文句にした無酸素運動主体のビリーズブートキャンプとは違い、90日間で体重5キログラム減を目標とする減量プログラムだ。


 「はらすま」の特徴は、参加者が日々の体重や行動記録を入力するだけで自らの生活習慣と体重変化の関係を分かりやすく把握できること。参加者はまずパソコンの登録画面に現在の身長と体重、目標体重を入力。目標体重に達するよう自動計算された1日当たりのカロリー削減量(250キロ―550キロカロリー)に基づき、「ご飯を3分の2にする」といった「100キロカロリー削減カード」から、実施可能なカードを自身で選択して減量プログラムを決める。


 プログラム開始後はパソコンや携帯電話などから朝と夕方の体重と減量メニュー実施の有無、会食や出張、体調不良など特記事項を入力。体重変化のグラフや減量メニューの実施状況、特記事項が記録画面に一覧表示される仕組み。保健師が電子メールなどを通じてアドバイスする機能も搭載した。


 実際にメタボと診断された日立の社員53人を対象に行った実証実験では、はらすま実施後に参加者の6割がメタボから脱却。平均5キログラムの減量に成功した。今後、さらに研究開発を進め、早期の商品化を目指す。



 【日本ユニシス】


 社員向けウェブサイトから“メタボ危険度”を簡単にチェック―。日本ユニシスではイントラネットを通じて、社員に自発的なメタボ対策を促している。自分の身体データを元に判定を行う“セルフチェックサイト”などを活用、メタボの危険性は身近にあるという認識を高め、生活習慣の改善に役立ててもらおうという狙いだ。


 社員向けサイト「セルフチェック」は、腹囲や体重、血圧などを自分で入力し、メタボの症状かどうかを確認できる。データ入力だけですぐに判定できる手軽さから、約400人の社員が利用しているという。各データは過去から現在までの推移をグラフで表示でき、ダイエットへのモチベーション向上という役目も担う。


 また「ストレスもメタボの引き金になる」(日本ユニシス)として、ストレス充満度を測るサイトもそろえるなどチェック機能を充実させている。


 ただ、社員の能動的な対応に期待するだけでは全社的なメタボ解消は難しい。そこで同社は、健康診断結果を管理するシステムを用いて再検査の日程を社員に通知し、参加を促している。


 セルフチェックや健康診断で不安に思う部分があれば、本社内の健康管理センターに常駐する保健師に相談でき、症状の回復や生活習慣改善に向けたアドバイスがもらえる。同センターでも「気軽に相談できる雰囲気づくりを心がけている」とし、本人の“脱メタボ”を強力にサポートする。



 【NEC】


 NECは保健指導を支援する遠隔面談・管理システムを開発し、社内で実証実験を始めた。パソコンや携帯電話のテレビ会議機能を活用、指導する側(保健師など)と対象者(社員)がウェブ画面上で検診結果や日々の体重などの健康情報を共有する仕組みだ。まず十数人を対象に、1人当たり3カ月から半年かけて実験。所定の期間が過ぎた被験者は順次入れ替え、実証データを増やしていく。


 現行の仕組みでは、ウェブ上のやりとりは電話での相談と同等とみなされ、“アメとムチ”の基準となる評価ポイントは高くない。しかし、指導対象者の見込み数に対する指導者の不足が俎上(そじょう)に載る中、NECでは「遠隔指導が有効なツール」(新IT戦略推進本部)とみている。


 一方、対面型のコミュニケーションも怠ってはいない。7月26、27の両日、東京・三田の本社ビルで従業員の家族を招いた催し「NECファミリーデー」を開いた。入場者は土、日曜の2日間で計2100人。家族を交えた本社ビルでの健康イベントは今回が初めて。イベントでは自慢の「健康メニュー」の紹介や親子そろっての健康体操など、家族ぐるみでの健康管理の大切さを伝えた。



 【NTTデータ】


 メタボ克服には運動が良いと分かっていても、面倒くさくて長続きしないというのが世の常。NTTデータがインターネット経由で提供する生活習慣改善支援サービス「クリエイティブヘルス三健人」は、健康に良いことをするとポイントがたまり、ギフト券などに交換できるといった、参加者を飽きさせない工夫を随所に設けているのが特徴だ。


 約4万5000人が利用する同サービスの料金は月額315円から。オムロンヘルスケア(京都市右京区)のIT歩数計でカウントした歩数データをパソコン経由で専用サイトに送信すると、歩数グラフを自動作成し、いつどれくらい歩いたかが一目で分かる。


 参加者のやる気を引き出す工夫として、同僚内での月間ランキングを表示したり、コミュニケーションサイトを通じて利用者同士が語り合ったりできる機能を搭載した。1000歩ごとに1円相当のポイントを獲得できるため「忙しくても遠回りして歩くようになった」と、参加者から好評だという。


 「生活習慣改善プログラム」では、行動科学理論に基づいて九つの健康増進プログラムを用意した。食事、禁煙、節酒、糖尿病改善などについて参加者の生活習慣をチェックし、改善目標を設定すると、それに基づいたアドバイスが毎週、電子メールやホームページを通じて送られてくる。専門家のアドバイスを定期的に得ることで、ひとりでは難しい生活習慣改善も実現できそうだ。


出典:朝日新聞