魚好きが日本人の心臓を健康に保つ
日本人男性は、喫煙率が高いにもかかわらず、白人ないし日系アメリカ人に比べて血管のプラーク発生が極めて少なく、冠動脈性心疾患(CHD)の発生率も低い。この差は、日本人が長い期間ほぼ毎日魚を摂取していることによるものだという。この知見は、医学誌「Journal of the American College of Cardiology(米国心臓学会誌)」8月5日号に掲載された。
報告を行った米ピッツバーグ大学(ペンシルベニア州)公衆衛生大学院疫学部の関川暁助教授によると、日本で暮らす日本人は魚を毎日約100g食べているという。米国心臓協会(AHA)の現行のガイドラインでは、心疾患のない人は、サケ、ビンナガマグロなどの油分の多い魚を少なくとも週2回摂取すること、すでに心疾患のある人はオメガ-3脂肪酸を毎日少なくとも1g、できれば魚から摂取するよう推奨されている。ただし、過剰出血のリスクがあるため、医師への相談なく1日に2gを超える魚油を摂取するべきではないとされている。
今回の研究では、日本人281人、白人アメリカ人306人、日系アメリカ人281人(いずれも男性のみ)を対象に、全被験者から血液検体を採取するとともに、電子ビームコンピュータ断層撮影(EBCT)による冠動脈石灰化の評価、頸動脈の超音波検査を実施。その結果、日系アメリカ人には心疾患の危険因子(リスクファクター)が最も多くみられ、ボディ・マス・インデックス(BMI:肥満指数として用いられる)、血圧、トリグリセライド(中性脂肪)の平均値が最も高かったほか、糖尿病の比率も高いことがわかった。
日本人は、心疾患の重大な危険因子である喫煙率が47%と飛び抜けて高かったものの、冠動脈石灰化および頸動脈の肥厚は有意に少なかった。血液中のオメガ-3脂肪酸値は日本人9.2%、白人3.9%、日系アメリカ人4.8%であったが、日系アメリカ人で冠動脈石灰化および頸動脈肥厚が最も多く認められた。
米サウスダコタ大学サンフォードSanford研究所(スー・フォールズ)のWilliam Harris氏は「魚類の摂取が日本人の健康を維持する重要な因子である」と述べている。魚油を多く摂取するとともに、飽和脂肪を控えることが心疾患リスクを下げるのに最良の方法だという。イヌイットはオメガ-3脂肪酸と同時に飽和脂肪酸も多量に摂取しているため、さほど心疾患の減少がみられないと同氏は指摘する。重要なのは魚ないし魚油を継続して摂取することで、魚油サプリメント(栄養補助食品)も有効だが、オメガ-3脂肪酸の含有量が1カプセルにつき1gであることをラベルで確認する必要があるという。魚を食べればなおよく、自然のオメガ-3脂肪酸を含むサケ、イワシ、ビンナガマグロ、ニシン、サバなどを4オンス(約113グラム)、週2回摂るようHarris氏は勧めている。
出典:Dr.赤ひげ.com