真夜中の海。
月も出ない夜は本当に何も見えません。
そんな中、私の艦は光の粒を散らし、流れ星のように海の上を走ります。
艦の周りで蛍のようなキラキラした光を放つのは夜光虫と呼ばれるプランクトンです。
初めて見た時はその美しさに感動し、一生懸命携帯電話のカメラで撮影しようとしました。
残念ながら当時のカメラの性能では暗闇しか写りませんでしたが。
月が出ている日、波が少なければ海面に月の光が長く末広がりに映ります。
私はそれを月のドレスと呼んでいました。
感受性豊かな10代の私に忘れられない夜を見せた海は、朝を迎えて徐々に明るくなっていきます。
そして、彼女達は現れました。
マストにはためくガラガラヘビの旗。
距離感が狂うほど巨大な300m超の大きさの原子力空母。
そして空母に付き従う何隻ものイージス艦や駆逐艦。
そして今は見えていない、原子力潜水艦達。
アメリカが誇る空母打撃群の姿がそこにありました。
当時まだアメリカに行ったことのない私は「これがアメリカか」と衝撃を受けました。
その後いつの間にか米海軍の士官数人が本艦に乗り込み(確か艦載ヘリで来ていた気がする)、私の想像を超える規模の合同訓練が始まるのです。