短歌
二十五年の歴史に幕を引き、葛城歌壇が終了しました。
奈良の友人の誘いで参加して十年、毎年短歌大会に応募してきました。出詠料1,000円、立派な冊子が届き、入選作でなくても自作を載せてもらえます。落選作であっても一次選考を通過した作品には★印が付くのが面白く、一緒に参加していた仲間と一喜一憂しながら楽しんでいました。
この歌壇のために年二首だけ、しかも自己流で作るというスタンスを貫いてきたのですが、二つの出来事があり、それが今に結びついているような気がしています。
一つは、2018年に佳作入選したこと。
出たいけど出ないと決めた集まりの写真が届くあのひとがいる
もう一つは、なにげなく観ていたNHK短歌で江戸雪さんの存在を知ったことです。江戸さんがあらかじめ作った上の句に、出演者が下の句を考えて当てはめていく、そんなコーナーがありました。
上の句は「葉脈をかみしめて食む桜餅」。出演者はそれぞれ個性的で上手な下の句を発表していきました。そして最後に江戸さんが自作を出してきたのですが、その下の句が「春もあなたにやさしくされて」だったのです。
葉脈をかみしめて食む桜餅春もあなたにやさしくされて
強烈なインパクトでした。葉脈という普段あまり使われることのない具体的な言葉によって、食感と味がありありと甦ります。桜餅につながる初句と二句の流れのなめらかさ、音のうつくしさ。そして下の句での、めまいのするような飛躍。その後江戸さんに傾倒したことはいうまでもありません。
葛城歌壇終了の報せを受けた去年の今頃から、ぽつぽつと歌を作りだしました。そのうちに自己流の限界を感じて、あれほど敬遠していた勉強も始めました。
短歌は季語もなくて自由だ、とよく言われますが、それは誘い込むための常套句です。本当に難しい。でも、苦心惨憺して言葉を選ぶ作業がこの上なく楽しくもあるのです。