私が殺した二羽の鳥 | 椚田のブログ 

私が殺した二羽の鳥

花鳥風月のうち、鳥がいちばん気にかかる。
興味を覚えたのは三十代のはじめだったろうか。今は身近なものなら、名前も鳴き声もだいたい分かるようになった。
冬は鳥目当てで里山へ出かけるし、釣りの最中にキセキレイでも見つけようものなら竿そっちのけである。
歳をとったということなのかもしれない。

もっとも古い記憶のひとつに、ツバメのヒナを殺めたというものがある。
幼稚園からの帰り、いったん祖母宅に寄って親の迎えを待つ時期があった。ヒナは巣から落ちたところを拾われたのか、簡素な紙の箱で飼われていた。
祖母と一緒にこれを大事に愛でていたはずなのだが、ある夕方、私はヒナの体に数箇所ハサミを入れてしまった。
あまりの非道に夢だったと思い込みたいのだが、部屋の薄暗さがうつつの肌触りとして残っている。

場面は高速道路へ移る。
カラスの面白さに魅せられ、やがてハシブトとハシボソの区別もつくようになった頃だった。
次の仕事場へ向けて走行車線を流していると、前方の路側帯で熱心に餌をついばむハシボソが目に入った。 接近するクルマに気付いたカラスは食べることをやめ、なぜかこっちに向かって飛び立ってきた。ハンドルを切ることも、アクセルを抜くことも、まるでできなかった。カラスは100㎞/hで走行する営業車の窓枠に激突した。ミラーに、黒い羽を撒き散らしながら落ちていく姿が映った。

それから何年もあと、駐車場へ向かう行く手に一本の長い風切羽が落ちていた。とても立派なもので、陽にかざすと漆黒は紫にも緑にも輝いた。クルマに乗り込むとともに、そのカラスの羽をグローブボックスに仕舞った。

羽は今、ペン立てに差されていて、次のクルマが到着するのを待っている。