【特集】「中国が怖い」 小泉外交の「脱亜入米」
野党代表までも「親米」、アジアを遠ざけ米に求愛
「日米関係が良好なほど、中国と韓国などのアジア諸国とも良好な関係を築くことができる」
先月17日、小泉純一郎首相がブッシュ米大統領に会った時に語った言葉だ。第44回衆議院選挙(2005年総選挙)で自民党を圧勝に導いた小泉首相の外交は、「アジア軽視-対米一辺倒」の傾向がますます露骨になっている。日本が明治維新後、アジアを無視して西洋の仲間入りした、いわゆる「脱亜入欧」をもじって「脱亜入米」という言葉まで出るほどだ。
小泉式外交が戦後日本の外交原則から根本的に変化したかというと、必ずしもそうとはいえない。日本国内では小泉首相もやはり「国民が反発しても、対米友好関係だけは維持する」という戦後の外交原則に忠実だという評価が一般的だ。冷戦終結後15年間、日米同盟のあり方をめぐってさまざまな議論が重ねられてきた。このような議論がここ1年の間に急速にひとつの流れに収束しているという点が、むしろ注視すべき部分だ。
米国重視は今や日本の国是のような状況になっている。靖国参拝問題で韓中両国と首脳会談も開けなかったが、「靖国参拝で日本が不利益を被ることはない」という極端な議論が横行している。第1野党である民主党の前原誠司代表も「日米同盟重視か、アジア重視かといった二者択一的問題ではない」と話す。このような状況では「アジア重視論者」らの声が反映される余地はなさそうだ。このようになった最も大きな理由が「中国脅威論」だ。
昨年11月、中国海軍の原子力潜水艦が日本領海に侵入するや、海上自衛隊は海上警備行動をとった。今年に入り、4月に中国全域で行われた反日暴力デモ、東シナ海の天然ガス田に対する中国の試掘着手などは、日本人に「中国は危険な国」という認識を植えつけた。小泉首相の靖国問題に関しても、膨張する中国がこの問題を「日本を脅かすための外交カード」に利用していると見る日本人が増えている。
多くの日本人は「靖国参拝さえしなければ、日中関係は改善されるだろう」と考えてきた。そう語る日本人たちも「やはり中国は並のやり方では思う通りにいかない相手なのか」と慌てている。今年3月、中国が制定した「反国家分裂法」は、台湾に対して軍事力を行使できるとするもので、冷戦時代の中台間武力衝突という悪夢を彷彿させた。中西輝政京都大学教授は「ここ1年間、中国の動きはアジアの平和を脅かす存在が誰かという問いに対して、劇的なかたちで解答を示した」とし、「日米同盟に関するこれまでの観念的な論争は何の役にも立たない論争へと転落している」と語っている。
「米国とだけうまくやっていけばいい」とする流れに対しては、多方面から批判の声が上がっている。その中のひとつは、米国がいつか経済的利益の大きい中国との提携を選択し、日本は置き去りにされるといういわば「米中提携論」だ。1970年代初め、米国が日本の頭越しに中国と手を結んだ「ニクソンショック」を経験した日本が、常に警戒している部分だ。これに対して、過去の「ニクソンショック」は経済的な利潤よりはソ連の脅威に対する対抗と共産陣営の分裂という戦略的判断によるもので、そのような状況下でも米国は日本・韓国・台湾の防衛任務を放棄しなかった、という反論も出ている。外交評論家の岡崎久彦氏は「米国は経済的な利益のために日本を捨ててまで“膨張する中国”と手を結びはしない」とし、「現在のような日米同盟は2008年の米大統領選挙で民主党政権が誕生しても、大きく変化する理由が見当たらない」と断言する。
日米同盟に対するもうひとつの批判は、危険な中国を他のアジア国家同様、穏健な国家へと誘導することが重要で、日本は米国と一体となって中国に対抗してはならない、とする「アジア共同体論」だ。日米の二国間関係よりアジアとのマルチラテラルな安全保障を構築することが未来志向的だとする立場だ。このような主張は経済的な動機に基づく側面が強い。このような立場に立つ人たちも、あくまで米国との緊密な関係を維持しながらアジアに仲間入りすべきとする「親米入亜」論を掲げている。何れにしろ、日本の「米国重視」外交には変化がないだろうと見ているわけだ。
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