外相訪中と靖国参拝 政治部 弟子丸幸子(10月17日)
小泉純一郎首相が17日午前、靖国神社を参拝した。中国、韓国をはじめ周辺諸国は強く反発。23日からの予定で調整していた町村信孝外相の訪中をはじめ、首相の靖国参拝は今年も外交に大きな影響を与えるだろう。
「とにかく内閣改造までに中国に行きたい」。外相から強い指示が下ったのは10月上旬だった。11月2日に予定する内閣改造まで1カ月もないタイミング。中国課は大慌てで準備に走った。
外務省幹部も「こんな時期に外相自ら訪中を望むとは思ってもみなかった」と意外感を強調した。というのも外相は、初外遊先として米国を強く希望し、就任からわずか1週間で出発。その後、短期間で多くの国を訪問したが、初めての訪中は就任から丸半年がたった今年4月になってから。それが外相の中国への距離感をよく表していた。本来、今度は李肇星外相が来日する順番だが、今回の決断は、外交儀礼にもこだわらないことを示していた。
外相の突然の訪中の意向について、永田町では「外相留任をアピールする猟官運動だ」と冷ややかに向きもあった。だが、外相周辺は「近々とされる小泉純一郎首相の靖国神社参拝に備えた行動だった」と解説して見せる。
首相がいつ参拝するのかは、外務省にとって例年、最大の関心事だった。なかでも今年、多くの外務省幹部が懸念してきたのが、10月17日から始まる靖国神社の秋季例大祭に合わせた10月参拝だった。
予兆はあった。参拝時期は韓国の盧武鉉大統領の来日日程にも影響する。当初、6月の日韓外相会談では「10月中旬」で合意していた。その直後、首相官邸から内々に「12月下旬で再検討してほしい」との指示があったという。「もしかして10月に参拝するつもりなのか」――首相官邸の意向を聞いた外相は考え込んだ。
小泉人事の常で、内閣改造の際、外相として留任するのか、退任となるかはまったく分からない。外相にとって、中国が最後の外遊になる可能性もあった。それでも、首相が靖国神社を参拝する前に、外相訪中の意向だけでも、中国側に伝達しておく必要がある――外相はそう判断したようだ。もちろん、小泉外交の弱点とされる対中外交で存在感を示しておくことは自らの将来にもプラスになる、との思惑もあっただろう。
町村外相は李外相との会談が成立した場合、年内の日中首脳会談の開催を打診する考えだった。11月中旬に韓国の釜山で開くアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議や、12月中旬にマレーシアのクアラルンプールで開催する東アジア首脳会議の場を想定。前回の外相訪中では「反日デモ」問題が最大の焦点だった。中国側の「謝罪」問題は残っているが、あえて取り上げず、関係改善に向けた協議を優先する意向だった。
日中首脳会談の設定は毎年難航しており、靖国参拝の直後となる今年は、なおさらだろう。外相の訪中を除いても、この10月は異例なほど、中韓との協議が多かった。例えば中国とは10月上旬だけで局長級協議を2度開催。谷内正太郎外務次官も訪中し、次官級協議も開いた。これも、首相の靖国参拝に備えた外交戦略の一貫だったとされる。
今年1月、小泉純一郎首相は外務省幹部にこんな話をしたという。「靖国参拝がないことを前提に外交を考えているわけではないだろうね」。
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