植生回復の“切り札”か…三宅島でシダが驚異の生命力
![]() |
| 火山性ガスの影響で枯れた三宅島の山林に繁殖するユノミネシダ(7日、坪田地区で) |
火山ガスの猛威で樹木がすっかり枯れ果てた地域もある伊豆諸島・三宅島(東京都三宅村)。その一角にシダ類が新たに繁殖している。専門家は過酷な環境にも負けないその生命力に驚くとともに、島の植生を一部回復する“切り札”としても注目している。
シダが繁殖したのは、島東部にある坪田地区の三池集落。帰島が許されるようになった島の中でも、火山ガスの高濃度地区として住民の立ち入りが制限されている地区だ。2000年夏の雄山噴火以来、火山灰と火山ガスのダメージで、枯死した木々ばかりが広がっているが、その荒涼とした風景の中で、集落裏のがけをほぼ覆い尽くすまでにみずみずしい浅緑のシダが広がっている。
三宅島の植生に詳しい筑波大講師の上條隆志さん(37)によると、このシダは、硫黄泉で有名な和歌山県・湯峰で発見されたユノミネシダ。噴火翌年の夏に、都の委託を受けて同集落で植生を調査していた上條さんが、岩陰に草丈約50センチのユノミネシダが生えているのを見つけた。噴火前には群生していなかったという。
上條さんが資料を調べたところ、同島で戦前に生えていた記録が見つかった。上條さんは「昔の株や胞子が残っていたのは、あり得ない話ではない。他の植物が一切生きることができないこの場所でも、生活できる種があったなんて」と自然の力に驚嘆する。
この集落周辺は100種類以上の植物が群生する緑の宝庫だったが、今ではシダ以外の植物はほとんど枯れ、むき出しになった土壌の流出が心配されている。上條さんは「森の完全な回復はガスが止まらない限り難しい」としながらも、「地表を何かが覆っているだけで、浸食を防止することができる。ガスに強いユノミネシダのような植物がもっと増えてくれればいい」と期待している。[ 2005年2月8日0時37分 ]
