POLYSICSツアーが中止になって、「あーマジで残念だ」って、思おうと思った
多くの(と書き出してみたものの、今回の一連のコロナ対応において表現&文化活動に対するこの国の軽視っぷりを目の当たりにして、ああもはや日本においてはエンタテインメントに心酔する人間などはすでにマイノリティだったのか、という事実を痛感してはいるのだが、とはいえ少なくない人数の)エンタメ好きな人たちと同じく、俺もこの1ヵ月そこらでもいくつかの公演キャンセルを経験した。
書き出してみる。新しい地図ファンミ―ティング。KIRINJI。コーネリアスVSロザリオス。五反田団(現時点では発売延期だがおそらくやらないだろう)。ほりぶん。そしておそらく今月のバッファロー・ドーターと坂本慎太郎も見送りとなるだろう。書いていて目眩がしてくる。いったいどれだけの名演が、日の目を見ることなくその機会を奪われてしまったのか。
で、きょう4月3日、ポリシックスのツアー中止のアナウンスをツイッターのタイムラインで知って、そのとき俺は外を歩いていたのだけど、かなり大きな声で「あああ、はあーあ、あーーもう」と声を漏らしてしまった。
>POLYSICS公式ツイッター
https://twitter.com/POLYSICS_TOISU/status/1245999537782734848
>ハヤシヒロユキ公式ツイッター
https://twitter.com/HiroHayashi78/status/1246004226460758016
この状況、つまり誰のせいでもなく(明確な補償を設けずに自粛要請だけを繰り返す政府には大きな責任があるが、そういう経済面の話とは別に)ただただ公演を行うことができないという事態に対して、「いちばん辛いのは本人(=バンドや劇団)たちなんだよね」という人の気持ちもわかる。わかるというか実際そうなのかもしれない。身を削ってゼロから表現を作り上げ、やっと他人に披露しようというときにその道を絶たれる辛さは想像を絶する。
一方でウイルス対策の視点では、そもそもいまライブハウスでライブをやるのは、正直ありえないことでもある。仮に今バンドがライブを強行したとしても、正直、俺は行かなかっただろうし、バッファローや坂本さんのライブも、客のためにも演者スタッフのためにも正直延期または中止してくれないかとすら思っている。なぜって、事実、世界中で、というか日本でも人が死んでいるのだ。死んでいい人などいない。ましてや自分をここまで生かしてくれたライブハウスから死者を出すことなんてあってはいけない。
ただ。ただ、今夜ポリシックスのツアーが中止するという現実を前にして俺は、俺が感じた「とにかく残念でしかない」という気持ちを尊重しようと思ったのだった。
コロナのことを考えたらライブはやるべきではない。でも、残念だ。とにかく残念だ。やりきれない。ポリシックスのライブが観たかった。観たかった。残念でしかない。
本当は「残念」なんて言葉で済ませられない、このいまのどうにも言い表せられない気持ちは俺だけが感じた確かなもので、それで、俺はなんというか、その残念な気持ちの奥の方で、「あ、俺こんなにポリシックス好きだったんだ」と、ふと思った。で、それはそれで、変なんだけど、ちょっとうれしかったりもしたのだった。
俺は今夜くらいは、バンドのこととか音楽シーンのこととかこの先の日本のこととかは一旦置いといて、「ポリシックスのライブが観られなくて残念だ」といういまの気持ちを尊重しようと思う。で、いま様々な状況で引き裂かれそうになっているエンタメに心酔する人たちにも、そうあってほしいと勝手に思っている。
おそらくこの先(というかすでに)、「ファンならこうあるべき」という同調圧力があらゆる場面で生まれてくる予感がある。もちろん「こうありたい」という思いを胸に行動することは大事なことではある。しかし一方でそこからこぼれ落ちてしまうパーソナルな気持ちも、ちゃんと持っておきたいと思うのだ。
だって残念じゃん。悔しいじゃん。観たかったじゃん。誰に気を使うことなく、誰に引け目を感じる事なく、そう思っていいんだよな。自分で自分にそう言い聞かせるように、今夜はポリシックスのツアーが中止になってしまった悲しみを噛み締めようと思う。
それは、自分がバンドのことをどれだけ愛しているかということを実感することと同義なのだ。
で、それはきっと、すっごく幸せなことでもあるのだ。
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さて蛇足として、なんでいまのポリシックスのライブが観られないことがこんなに残念なのかについても書いておく。理由はシンプルで、ツアーに冠されていた最新アルバム『In The Sync』が、バンドの最高傑作だからです。以上。ははははは。すごい、書くことを放棄しているw や、だって本当にそれに尽きるんだもん!
何度聴いても聴き足りない密度。すでに備えていたバンドの資質や魅力をここにきて再ブーストさせるような出色の楽曲群と演奏。とにかく血中興奮濃度(なんだその言葉)を沸騰させることだけに特化した刺激物の塊。こんなアルバムを結成ウン十年目でドロップしてしまったことは、2000年に『XCT』で出会ってから聴き続けてきた身としてはもうたまらなく嬉しかったし、今も絶賛リピートリピートリピート中です。
だからこそこの傑作を引っさげたツアーの中止はとてつもなく悔しいんですが、まだ未聴な人がいたら即聴いてほしいっす。よろしくね! ポリシックス=ライブバンドという見立てに異論はないけど、録音だってもんのすごいんだからな、ポリは! 特に最新アルバムは近年でも出色の音が刻まれているので、ここから入るのも全然OKというかむしろおすすめですので、ぜひに。
あとこれは蛇足かもですが、えげつないエネルギーを放出するポリシックスに相対するように、ベッドルーム・テクノ・ミュージック(そんなジャンルはない)としても機能しうるザ・ボコーダーズの活動がスタートしていたことは、この状況においてアドバンテージになりうるのでは、とも思った。(※同メンバーの別名義バンドです)
いやそんな単純な話ではないというのは重々承知の上ではあるのですが、この先、表現を生業とする人たちにとってはパラダイムシフトが起こる可能性もあり、現状のウイルス対策と照らし合わせると、唾を飛ばさずにいい塩梅のテクノをやるというコンセプトは意外と活路があるのでは、とも。とにもかくにも、バンドも俺もコロナ渦中を生き延びてまたライブハウスで再開したいものです。健康第一!!!!
(さらに超蛇足。ツアー初日の千葉LOOK観ましたがアルバム曲を全曲やらなかったんですよね。自分でもしつこいと思う、というかもはや粘着レベルの自覚はありますが、問答無用の傑作アルバムを引っさげたツアーで(ナカムラさん脱退ツアーとは言え)アルバム曲は全曲聴きたかったと思うのはそんなに無理難題な欲望なのでしょうか)(あー我慢できずに書いてしまった馬鹿馬鹿馬鹿ry
初めて行った千葉LOOK、最高のハコでした!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!11

