『真冬のラブレター』――SMAPがのこした“喪失のうた”について | オーヤマサトシ ブログ

『真冬のラブレター』――SMAPがのこした“喪失のうた”について

https://twitter.com/oddcourage/status/906131381016641537

↑ここからの連ツイを転載します。

 

 

SMAP好きな人にも、そうでない人にも、ぜひ聴いてほしいのが『真冬のラブレター』っていう曲です まあ俺が今週通勤中にチャリ漕ぎながら毎日熱唱しててそのたびに泣けてしょうがない曲なんですけど

ひとことで言うと喪失がテーマの曲なんです しかも自分ではどうしようもない、どうすることもできない理由で大切なものを失ってしまうということについて、つまりこの世界に生きてる限りどうしたって逃れることのできないことについての歌

曲の主人公はなにかを失ったことに対して自責の念に駆られている <例え~だとしても>とエクスキューズするまでもなく、悲しみややるせなさでいっぱいになってしまってしょうがない状況にいる

この曲で何度も繰り返される<がんばってみるよ>ということばは、ギリッギリのところでなんとか主人公を支えてるつっかえ棒みたいなもので、その果てになんとか絞り出した<新しい明日>という未来にさえ、失ったものは決して戻らないという諦観が漂う

でも最後まで聴くと、同じくサビで繰り返される<理屈じゃないんだ>ということばの輝きが同時に真に迫ってくるんです 失われたものは戻らない でも失われたものを想うとき、それは確実に自分のなかに存在しているというもうひとつの真実

メロディとアレンジもすばらしい サビ直前の<♪こーこーろー><♪そーしーてー>のところで主旋律に寄り添うように鳴るギターが泣ける いまはここにいない誰かが彼方から伴奏/伴走してくれているような気がして

5人のボーカルも歴代のなかでも出色の出来 大胆かつ繊細な歌い出しは草彅以外ではありえなかったし、<出会ったことさえ悔やむ>というハードなラインをその切実さは損なわないまま柔和に届けてくれる稲垣

楽曲の切なさをいちばん体現しているのが中居の千切れるほどに儚いボーカルで、木村は決めのブリッジをいつもの逞しさの裏に一筋の優しさを込めて歌う そしてこの曲を象徴するのがなんと言ってもラストの香取ソロ

よけいな力をまったく込めずに、胸を締め付けるよなまぶしさと、その中にわずかな迷いやゆらぎをたたえた、彼のボーカル史上最高峰のテイクといっていい 近年のライブでのバラード曲の素晴らしさを思い返すたびに、この曲を生で聴けなかったのが本当に悔やまれる

アイドルって例え表面的にはどんなネガティブな表現をしても最終的には受け手にとってなんらかのプラスの影響をおよぼす表現者だと俺は思うんだけど、このどこまでも真摯でどこまでも悲しい曲をポップスとして成立させてるのはアイドルSMAPが歌っているからだと思う

改めてこの傑作をつくった方たち→『真冬のラブレター』作詞:甲斐名都 作曲:前田啓介 編曲:宗像仁志/田中邦和

で、なんでこの曲が #今こそ聴きたいSMAP曲 なのかというと、ただ俺が最近悲しい気持ちだったりするからなんですけどね ある意味お祝いの日なのかもしれないし、俺もそら前向きに行きたいわと思うけど、でもどうしても悲しかったり寂しいときってあるじゃないですか

俺はなんか最近ちょっと寂しくて で、変な言い方だけど、いま自分のなかに漂っている悲しさとか喪失感のこともないことにするんじゃなくてちゃんと大事にしたいなと思って そういうときに安易な慰めじゃなくて、ほんとの意味で悲しみに寄り添ってくれる曲もあるんだと

生きてる限り、いっつもなにかを失い続けて悲しくなったりしちゃう俺らのために、SMAPはこういう曲を歌ってくれてたんだと そういうことを思い出しておきたいと思って空気読まず連投する、そんな秋の泥酔の夜です

SMAPあんま興味ないとか知らんという皆様におかれましては、『僕の半分』というシングルのc/wに入ってるのでぜひ一度聴いてみてくださいね>真冬のラブレター TVはおろかライブでも一度も披露されぬままという曲なのですが、録音ほんと素晴らしいので