2016年12月19日『SMAP×SMAP』――「BISTRO SMAP」に最後の客が訪れた | オーヤマサトシ ブログ

2016年12月19日『SMAP×SMAP』――「BISTRO SMAP」に最後の客が訪れた

5人(かつては6人だった)のシェフが切り盛りする『BISTRO SMAP』に最後の客がやってきた。

 

彼はかつて大きな「終わり」を経験した。その終わりのあと、すぐさま世界を旅し、さまざまな音楽や文化に触れた話を、いままさにひとつの大きな「終わり」を迎えようとしている者たちに、必要以上にも思える軽妙な語り口で披露した。


彼は「一生ふざける」と言った。


「そもそもなんで終わるんですか?」
「バラエティは残酷ですね」

 

ふたりのシェフがそう言って涙を流したあの日を思い出す。あの終わりの日も、周りで涙を流す人たちの中心で、少し困ったような笑顔を含みながら、誰よりもふざけていたのが他でもない彼だったことを、思い出す。

 

そのときの映像を観て、「もうずいぶん前のような感じがするな」と彼は言った。


永遠とも思える時間も、一瞬のうちに過ぎてしまう時間も、等しく彼方へと過ぎ去ってしまう。

 

彼は大きな終わりを経験した。そして彼はいま、徹頭徹尾ふざけたこと言いながら、いままさに終わりを迎えようとするシェフたちが作った飯を、地味に食っている。

 

知らなかった音楽。味わったことのない料理。終わることで見える景色がある。終わらせることでしか見られない世界がある。


「そもそもなんで終わるんですか?」


その問いに彼は答えなかった。いま、彼に、俺はこう聞きたい。そもそも「終わる」とは、なんなのだ?

 

「人生に判定など必要ない」と。彼は言った。

「最後だからこそ、勝ち負けをはっきりと」と食い下がったレストランのオーナーに、彼はそれでも譲らなかった。

 

人生に判定など必要ない。

それはもっと正確に言うならば、「人生に判定などつけようがない」ということなのではないか。


それがなにによるものだったとしても、この世界には終わるものがある。そしてそこからはじまるものがある。彼はシェフたちにそう伝えるために、このレストランに訪れたように見えた。

 

「俺の人生、全部ひっくり返った人生だ」と、彼は言った。

 

彼の名は、何度も何度も何度も何度もひっくり返して、やっと呼べるようになるらしい。5人のシェフはこの夜、何度も何度も彼の名前を愛おしそうに呼んだ。