すごいたくさん映画を観た | オーヤマサトシ ブログ

すごいたくさん映画を観た

『ボーン・トゥ・ビー・ブルー』

ジャズ・トランペッター、チェット・ベイカーを描いた作品。
ヤク中でどうしようもないところからの再起をかけた、実話に基づいてる感じのストーリー。
映画なり現実のニュースなりでドラッグについての話を聞くと、そんなに“いい”ってそういう感覚なんだろう、と気になってしまう(やらないけど)。
作中で主人公は、ドラッグやるとすごい演奏ができるんだ!的なことを言ってたけど、そうなのかなあ。
話はなるほどーという感じだった。




『地雷と少年兵』

終戦後、ドイツ軍がデンマーク海岸部に埋めた数百万の地雷撤去に駆り出されたのは、ドイツ軍の少年兵だった。

5年ものあいだ占領を行っていたドイツに対する憎しみを抱えるデンマーク軍の軍曹は、監督を任された14人の少年兵たちに対し、極めて冷酷に接するが、しだいに彼らへの同情心が芽生え、いつしか心を通わせるようになる。
これだけ書くとヒューマンドラマ的なやつを想像する人もいるかもだけど、ストーリー的に大きな抑揚や盛り上がりなどは特になく、自分の体感では、全体の半分以上が地雷除去シーンだったくらいに思える。

「少年兵が地雷除去に従事させられる」
というめちゃめちゃミニマムなシチュエーションに限定することで、
「いつ爆発するかわからない」
という異様な緊張感が作品全体を支配していて、わずかな作業ミスによりいとも簡単に爆発する地雷と、あっけなく失われる少年の命――その一部始終は正直自分には心理的負担が大きすぎて、スクリーンを正視できない部分が多かった……。

ただ、それはつまり、戦争とは安易な美談や消化しやすいストーリーとして描けるようなものではなく、ただ過酷で残酷な現実として存在するのだ、というメッセージに思えた。抑揚のある物語なんてない。戦争とはそういうものなのだ。

ビビリの俺は正直、何度もスクリーンの前から逃げ出したくなった。観るの辛すぎた。でもそれだけ感じさせられる映画だったということでもある。




『さようなら』

原発事故が起き、難民として海外に避難させられている近未来の日本が舞台。
そこでは、アンドロイドが人の生活に普通に存在していて、主人公の病弱な外国人女性も、一体のアンドロイドと一緒に住んでいる。

現在的なテーマのなかにアンドロイドという(現状は)非現実的な要素が同居していて、演出も理屈や説明ではなく、かなり感覚に訴えるタイプのもので、観ていてすごい不思議な感覚。

でも問いかけられているものはすごくシンプルで、「いまここにいることとは/いつかここからいなくなることとは」というこの世に生まれた限り逃れることができない根源的なテーマが、全編に貫かれていた。
この作品に『さようなら』と名付ける勇気はすごいと思う。

最初から最後まで、ずっとザワザワという風の音がしていて、それがすごくよかった。
こういう映画はふだんまず見ないタイプのものだけど、けっこうな疲労状態にも関わらず寝落ちせずガッツリ観られたので、いい映画なんだと思う。
記憶に残るシーンがいくつもあった。




『ぼくの桃色の夢』

中国のある少年が青年になっていく成長物語。(←全然説明できてません)

リビドー全開な中学男子の妄想、80年代の中学生ってあんな感じだったのか!という衝撃、ベタな音楽の使い方、オフビート感ありつつもどこかいなたいギャグセンスなど、妙なテンションで突っ走る前半から、大人になった真性こじらせすぎモラトリアム青年の虚実がないまぜになっていく後半を経て、予想外のラストにゾワッとさせられる。
気づかないあいだに見知らぬところに連れて行かれてるような、不思議な作品だった。

初恋、失恋、受験、就職、親の死など、順調に人生のみそぎを済ませているように見えて、全然わりきれてないし納得できていない文化系男子の生きづらさ、どんづまり感が痛い。
ラスト近く、初恋の相手との××の最中に漏らす主人公のひと言は、俺には重かった。
あと高校時代のキスシーンがキモくて最高。泣ける。




『スナップ』

タイ?の青春映画。
とは言え、青春そのものではなく、青春を通り過ぎた=失った人たちの話で、そういう意味では『ぼくの桃色の夢』にも通じる部分があるかも(描いてるものは全然違うけど)
他の国でもそういうのはやりたいテーマなのかね。