SMAPはなぜ「いつの日にか また幸せになりましょう」と歌うのか――『がんばりましょう』を聴いて | オーヤマサトシ ブログ

SMAPはなぜ「いつの日にか また幸せになりましょう」と歌うのか――『がんばりましょう』を聴いて

こないだパワスプで流れてきた『がんばりましょう』を聴いて思った。
めっっっっっっっっっっっちゃめちゃいい曲だなこれ!!!(周回遅れ)

や、『がんばりましょう』がいい曲だ、っていうのはなんかもう一般常識レベルで共有されてる概念だとは思うし、俺だって前からそう思ってはいたけど、こないだパワスプで聴いたとき、そういうあれとは全然違う感慨が胸に迫ってきたんだよなあ。



「いつの日にか また幸せになりましょう」



この曲、なにに対して「がんばりましょう」って言ってるのかっていうと、「幸せになるためにがんばりましょう」って言ってるんだよね。最後のサビで「いつの日にか 幸せを勝ちとりましょう」って言ってるし。

で、その前の2番のサビで歌われるのが、このフレーズ。



「いつの日にか また幸せになりましょう」



いつの日にか・また、って、どういうことなんだろう。
文面通りに読み取ると、<かつては幸せだったけど、いまは幸せではない>、ってことだよね。
なんでわざわざこんな言い方をするんだろう。

そう思って冒頭の歌詞を読み返すと、そもそも最初に歌ってることもそういうことなんだよな。

「かっこいいゴール」を決められたことは、言ってみれば“幸せ”だけど、そんなものは「あッとゆーまにおしまい」。
幸せや希望の象徴である「星」は一瞬で消えてしまい、また別の、なんでもない、いつもの朝がやってきてしまう。



この曲のサビでSMAPは「どんな時も くじけずにがんばりましょう」と歌う。

なんでどんなときもがんばらなきゃいけないのか。
毎日クソみたいなことや、投げ出したくなるようなことばっかりで、幸せなんて、ほんの少しのきっかけであっという間に消えてしまうようなものだからだ。

この文脈って、「日々の小さなことに幸せを見つけていきましょう」っていうやつとは全然違う。
極端に言うと「生きてるってことはそれだけで素晴らしいこと」――そんなの嘘だって、この曲は言ってる。俺はそう思う。


終盤で「空は青い 僕らはみんな生きている」って歌われるけど、これは、「生きてるだけで素晴らしい」という意味ではない。
ただただ「空が青いこと」「僕らはみんな生きているということ」という、善も悪もないただの現実を見つめているだけだ。
つまり、どん底の血圧で、寝グセだらけで、頭を抱える悩みや、逃れられない過去や、貧困や戦争が消えることのない、そんな<きみの目の前の現実を見つめること>、<きみのとっての“いま・ここ”から逃げないこと>、それだけが「また幸せになる」ために必要なことだと、SMAPはそう言っているのだ。これ、応援ソングっってレベルじゃないほど、実はめちゃめちゃシビアなことを言ってると思う。



「がんばる」という概念とセットとして捉えられがちな「努力」や「根性」という言葉を「東京タワーのみやげ物に張り付いてるような薄っぺらな言葉」と言い放ちつつ、「それだってひとつの真実かもしれないよ」という解釈の余地を残してる。
これ、つまりは


<考え、行動するのは、君自身だよ>


というメッセージだ。

で、こういうメッセージを押し付けずに聴き手の主体性に委ねる姿勢は、SMAPだからこそのものだと思う。
SMAPは人にああしろこうしろとは言わない。
もっと言うと、こうしたほうがいいんじゃない、くらいのことも、ほっとんど言わない。
彼らが示すのはいつも自らの姿勢だけだ。
僕らはただ行動するだけ。判断するのはあなたたち。
そういう、どこまでも自由だけど実はすっげーシリアスなことをSMAPは発信し続けてるのだと思う。
もっと言うと、この曲に限らず、SMAPの活動にはすべてこの感覚が通底してる。
で、そういう人たちだからこそ、俺はSMAPが好きなんだなーと思う。


だからある意味、受け手である自分たちは試されてるとも言える。
自分はいま、彼らのメッセージを、ちゃんと受け取れているのだろうか?
俺はSMAPと向き合うとき、いつもそう考えているような気がする。



そんなようなことはこれまでだって感じてきたはずだったけど、
こないだのパワスプで
「いつの日にか また幸せになりましょう」
というフレーズを聴いて、また気付かされたのだった。
不思議だな。もう何度も聴いてきた歌なのに、まだ受け取れていなかったものがあったのか。

まあ、でもこれまでもそうだったように、きっとこれからもそういう瞬間が幾度となく訪れるのだと思う。
人と同じで、歌とも、ながく、ながーく、付き合っていくもんだしね。
で、そんな人たちの表現をこれからも受け取れるなら、こんなに幸せなことはない。