ドラマ『未成年』2015年初見の感想・8~11話 | オーヤマサトシ ブログ

ドラマ『未成年』2015年初見の感想・8~11話

8話から11話をいっき見したわけですが、まず前回7話の感想で書いた「登場人物の不幸が物語の駒にしかなってない」という件、あれ撤回。つーかそういう次元じゃなかった。
なんなんだ後半の不幸フルコースは。
なんつーか「これをやりたいからこうしました」っていう意図がモロバレな感じというか。
うーーーーーーーーーん、このストーリー運びは、ドラマとしては全然ダメだろ。
つーかこれ、当時はどう受け止められてたんだろう。


しかし、とは言え、この作品は失敗作どころか野島伸司の中でも、そして出てる役者の中でもいまだに代表作と言われることも多い作品で、まあその理由もわからなくもない。
物語の整合性とかクオリティを差し引いても残るものがある作品ではあるのだ。





8話

すべての発端となるデクの銃撃事件が起こる回。
物語としてはクライマックスへと向かうブリッジ的役割。

事件に対する順平の反応はそりゃそうだろうなあという感じ。
俺だったらあんな状況になったら順平とおなじセリフを吐く気が。

桜井幸子はいい演技するなあ……。

しかしここにきてより思うのが、要はこの物語って

「未成年は大人や社会から抑圧されている存在である」

という前提があってこそ成り立つものなんだけど、当時ってそこまでそういうものだったのかしら。

これって2015年のいまではもはや成立し得ない。
いま現在若者が抑圧から開放されているという意味ではもちろんなく、抑圧を理由にこういう行動をするってこと自体がメッセージになり得ない時代になってると思う。この作品よりより過酷で悲惨な世界に明らかになってるから。いまの日本は。

でも当時もどうだったんだろうな。
ヒロが校舎のガラスを割るシーンとかヘタすると「尾崎かよ」のひと言で片付けられちゃう気もするんだけど。そして2015年現在では「尾崎かよ」の前提すら消え行く時代という。

しかしいきなり銀行で銃発砲からの逃避行とは……驚きなのがこの時点で全11話のまだ8話だってことだよね。えーーまだどんだけ引っ張るの!? っていう。いまの連ドラでは考えられん!

でもそれこそさらに冷静に考えると、自分が当時(ここ重要。いま15~6でこれ見るのとは全然違うと思う)15~6だったとしたら、かなり熱くなってた可能性はあるかもなあ。
むしろジュブナイル的な物語として見るとすごくハラハラしつつもキラキラした冒険譚に思えなくもない。にしては人が不幸になりすぎだけどな…w






9話

「お前は綺麗だな」

デクに向かってヒロが言うセリフ。
回を重ねるごとに、ヒロのデクに対する想いが強くなっていくよね。
もはや憧れに近い感じ。

ヒロがすごいのは、「大人」「社会」とかいう漠然とした言葉を使ってはいるものの、それを発現する自分自身=ヒロ本人の立場から逃げてないことだと思う。

ネットが発達・普及したのはいいことの方が多いと俺は思ってるけど、反面SNSで、失言やちょっとミスしたした芸能人にまで「正義」という名のバッシング(という名のただの憂さ晴らし)を行う人たちが増えた。
ああいう人は自分の言葉を使わない。どっかで聞きかじった借り物のを使う。それは自分が発言するという責任から逃げているからだ。

でもヒロは違う。まさに借り物の、有り体の言葉をヒロに吐くマスコミのおやじとは対照的に、ヒロはヒロの言葉で人々に語りかける。

そしてここ超重要なのが、ヒロは自分で自分の名を名乗った!!!!!!!!!!!111

俺もそうだけど、公の場で自分の名前(本名)を語りたがらない時代になって久しい。
本名でいなくていい場所=心を開放できる場所=ネットを手に入れた結果、その歪として先述のバッシング炎上社会がまれたとも言える。

けど、それよりもはるかにリスキーなあの状況でヒロは自分の名前をはっきりと名乗った。
あれは自分の発言から、自分自身から逃げないというヒロのアティチュードそのものだ。
いま見ると荒唐無稽なシーンも多い作品だけど、あのシーンは、いまだからこそ響く・刺さるものだと思う。

そしてちょっと文脈はずれるけど、名前という縛りから唯一解き放たれてる存在がデクなんじゃないか。

障害を持っている=社会から予めドロップアウトしている(という描かれ方をしている)彼に新たな名前を与えたのはヒロだった。
そして彼はその「デク」という名前を自らに受け入れた。その時点でふたりには特別な絆がうまれていたのかもしれないな。

で、そんなヒロ像に説得力をもたせたいしだ壱成の演技が右肩上がりにすごいことになってきてる。目だけで演技できる人なんだよなあ。すごい。

かみやくん怖…なんという地獄絵図……
河相我聞の演技もやばいw
犯罪者が山に逃げ込んで内ゲバって、山本直樹『レッド』かよ!!!!とツッコミを入れたけど、次回でそういうセリフが出てきて驚いた。まあでもそう見えるよな普通。






10話

ヒロパパ超いいやつ…と思ったらダメかあ! つか、まあ、言うほどそこまでダメじゃない気もするけど。いや、だめかあ。なんかよくわかんなくなってくる(白目

もか兄貴、かんぜんに人権侵害だろw

神谷くんの妻、「こんなとこいても意味ないわ!」ってセリフ、母だなあ。
うん意味は無い 無いのだよ。全然、まったく。すごい正しいと思う。しかしそのあとで学校に残ってしまうのも、まあわからなくもないけど。

撃たれた銀行員がいちばん不憫な気がしてくる。

五郎「バーカお前がいちばんどうかしてたんだよぉ」
これ!!!! いちばん言ってほしかったことをwwwwwwwwwwwwwwwww!!!!!!!!!!1111111111111111


かつてヒロが“この世でいちばん美しい”と言ったデク。
彼はなにをわかってなくて、なにをわかっているのだろうか。
立てこもってからの彼を見て、そんなことを考えるようになった。
立てこもりはじめてからのデク、明らかに変わったよね。
9話で映った全員集合ポラの中のデク、いままで見たことない不自然にまではっちゃけた笑顔をしてるんだよね。
デクは自分の気持ちを言葉にしないから表情や仕草とわずかな言葉だけでこちらが読み取るしかないんだけど、立てこもりが始まってからのデクは以前より心情が読み取りづらくなってくる。


マスコミおやじから安田講堂のセリフきたねえ。
「かわいそうな未成年たちよ」
そしてフランスの核実験のことも!
借り物の言葉ばっかり吠えてたマスコミ人が「どういつもこいつも不感症さ」だあああああああ!!!!!1????? ざけんなクソ大人!!!!!!!(←ヒロ達に同化しすぎ疑惑

しかし野島伸司は自覚的に学生運動と重ねて描いていたんだね。ますます当時このあたりがどう受け止められてたのか気になる。


えっクリスマスイブ最後の晩餐に、もかの友だちはいないのwww
意外とシビアっつーかひどいwww もかも呼んであげればいいのに…そして食事を渡すデク…つーか食事も渡してなかったのかwww!!!!!!!!!!!!!1


桜井幸子の演技すげええええええええええええええええええええ


かみやくん「僕が東京にとどまっていたら、こんなに胸の奥底から高揚することはなかったに違いない」
そんなことないよきっと別にまだ若いんだし高揚することなんてこれからいくらでも!!!!!!!!!!!!!!111
あでも警察に追われて逃避行ほどの高揚はないか……←


「あなたと一緒にいると、私にはこわいものなんてないの」

「ヒロ、愛してるわ」


こんなシンプルなセリフもここまでの経緯を踏まえると泣けるわ…


ラスト、立てこもりはじめてからデクの表情が見えなかった理由はこれだったのか。
イラスト、せつない デク デク デクううううううううううう(←感情移入しすぎ
そしてストーリーは破綻&暴走しまくりながらも(もはや五郎が撃たれたことに動揺する余裕もない)、モノローグはいしだ壱成も声の演技も含め相変わらず冴えまくりなのであった。



早くおとなになりたいね
そしたら誰も文句は言わないんだろ?

へえー、そうでもないの?
おとなはおとなで大変なんだね

質問
だったらいったいいつなのさ
自由に羽を伸ばせるとき








11話

結論から言うと、11話は蛇足だと思う。
車が横転してヒロだけ逃げてって……
結局もかも死ぬしかみやくんの母親も死ぬし死にすぎだし、これはないだろーーーーーーーーーーーー

でもそんな無茶をしたのも、すべてはあるシーンのためだったのではないか。
ヒロの演説シーンではない(あれもよかったけど)。
ヒロとデクの邂逅だ。



あのシーンを撮りたいがために、すべての無理なストーリーがあったのではないか。
そう思えるほど、精神病棟でのふたりのシーンはすごかった。

ヒロが病室に入ってきたときのデクの表情は、この作品での香取のベスト演技かと。
そしてそれを受けるヒロもほんとうに素晴らしい。



初回の感想で俺はこう書いた。

<ヒロとデクのシーンの、あのやわらかな空気感は無くしてほしくないなー>

結果として、10話までヒロトデクのシーンでのやわらかな空気感が損なわれることはなかった。
むしろ後半は荒んだ状況になればなるほど、ヒロにとって羨望の対象であり、ある意味神聖化されていったデクとのシーンの美しさは際立っていった。


だが最後の最後に、最も切なく、やりきれなく、そして美しいシーンをふたりに用意していた。
本作ではそこまで使われることのなかった過去シーンのプレイバックを伝家の宝刀的に用いてまで、このシーンを最後の最後に用意してきたのだな。
ここがこの作品における、俺にとってのクライマックスでした。




もうこれ以外はどっからツッコんでいいのかわからないレベルの大波乱展開www
ラストシーン無理矢理いい感じふうにしてるけど全然大団円じゃないし、もうなにこれどうすればいいの感すごかったけど、デクとヒロのシーンはほんとうに心に残るものだった。
なので、もうそれでいい。もうそういうことにしておきます。





そんなわけでうーん総括するのも難しいけど、まずは役者がすごい。つか役者が引っ張ってたドラマだと思うます。
個人的にはいしだ壱成のすごさを発見しました。『聖者の行進』は毎週見てたんだけど、あれもいま見ると凄そうだなあ。


でも見てよかった。いろんな意味で、いまではありえない内容だったので。
作品に込められてるエネルギーはすごかった。
あと10年後に見たらまた違って見えるかも。
面白かったーーーーーーーーーーーー