スキマスイッチの『スキマスイッチ』はこんなにもすごかった―2015/4/2・NHKホール | オーヤマサトシ ブログ

スキマスイッチの『スキマスイッチ』はこんなにもすごかった―2015/4/2・NHKホール

※ネタバレあります



●つーか俺ずっと言ってるけど、ヤバイよ、いまのスキマスイッチ。ほんとはこのヤバさを、まだ知らない人にも伝わるように書ければいいんだけど。うーん。難しいw こんなにいい音楽をやる人たちなんだってことを、もっと知らせたいんだけどなあ。とりあえず今回は見終わった雑感のみ書き散らかす。



●4月2日、木曜日。スキマスイッチのツアー『スキマスイッチ』、NHKホール公演1日目。見ていて最初に頭に浮かんだのは「みずみずしい洗練」という言葉だった。



●『musium』ツアーから現在までのさまざまなトライアル(ベスト盤~ダブルス~ストリングス等)がすべて結実した、一切の無駄のないライブだったと思う。最新作+近年のシングル+過去アルバム曲というセットリストも、すべてに必然があった。他の会場のライブは一切見ていないしセットリストも見てないけど、今日のセットリスト固定でも全然問題ないんじゃないかな。むしろ他が想像つかん。



●そういうライブとしてのクオリティの高さは「洗練」と呼べるレベルに達している。一方で、じゃあすべてが“できあがっている”のかというと、そうでもない。この日のライブには一見洗練とは相反するような“みずみずしさ”が同時に存在していた。



●このツアーのために用意されたという過去曲のアレンジは、どれも簡単に言うと大人っぽく感じた。で、「雰囲気変えるために大人っぽくアレンジしよう」ではなく「いまの自分たちから出るものを素直に音にした結果、大人っぽくなった」という感じなのがよかった。これがいまの彼らにとっての等身大なんだろうなー、というのが出す音から伝わるから、洗練されながらもすっごくみずみずしく聴こえたんだと思う。全てに「無駄」も「無理」もない、よけいなものは何ひとつないのに、すこぶる豊かなライブだった。



●特に予想してたわけではなかったけど、1曲目は心地良く裏切られた。そこからの『夏のコスモナウト』『双星プロローグ』あたりのミドルチューンがよかった! あのBPMであそこまで腰にくるグルーヴを纏わせる演奏力はマジですごい。つかスキマライブにおいて村西さんのドラムがいかに重要さを思い知ったライブでもあったなー。手数は最小限に、それでいて1000発1000中レベルのドラミングにしびれた。

アルバムでアレンジの自由さに戦慄した『僕と傘と日曜日』はライブでより大きく羽ばたいていてこの日のベストプレイのひとつだったし、バリバリのチョッパーベースアレンジからの雪崩れ込む『アーセンの憂鬱』など、過去曲を差し込むセットリストの流れも素晴らしかった。あと『パラボラヴァ』の多幸感やばすぎ。昇天。



●全体にハッピーな雰囲気だったな。会場の空気がシリアスに引っ張られることがほぼほぼなかったというか。『musium』ツアーもすごく幸福なものだったけど、あのメッセージ性の強いステージに比べると、ただただいい演奏だけをするという、ある種聴き手に委ねるような姿勢がすごく潔く、気持ちいいライブだった。これも『musium』以降のダブルスやベスト盤ツアーの経験が活きてる気がする。こんなに観客を緊張させないライブも珍しいのでは。

しかし色々なライブをしているスキマだけど、彼らの本領はやはりアルバムツアーなのだなと痛感。これだけ満足させられたのに、まだあと何回でも見たくなる懐の深さ。そしてホールクラスの会場の使い方うますぎ。音もめちゃめちゃよかった。あと客のノリが最高。メンバー登場時から異様なまでの歓声と熱気。このファンとの関係も、かれらが地道に作り上げてきたものなんだよなあ。そう思うと感慨深い。



●最後の最後に歌った曲については、ある意味このライブに用意された明確な「オチ」で、この曲について長々語るのは野暮かもと思いながらも、やっぱり語らずにはいられない。この曲を鳴らすためにこのアルバムが、そしてこのライブが用意されたのかと思うほど、ほんとうに素晴らしかった。音源の時点でもかなり完成度高かったアレンジはさらに進化し、ライブだからこその緊張感とダイナミズムでこの曲の持つパワーをさらに増幅・拡大させていた。

『SL9』のライブアレンジをカオスと表現するなら、この日のこの曲はすごくシンフォニック。静寂から生まれた音と音が呼び合い、重なり、美しい轟音となり、そしてまたひとつの音に戻っていく。これだけの幸せに満ちたポップス・フルコースをさんざん食べさせられたあとのデザートにしては刺激的すぎる、しかしこれ以上の締めは考えられない。あの「音楽」を聴けたことが、この日何より嬉しかった。



●アルバム『スキマスイッチ』は、スキマ史上もっともメッセージのないアルバムだと個人的には思っている。10曲というミニマムな構成の中で、ただただ異様に純度の高いポップスが並んでいるだけ。この“だけ感”はこの日のライブも一緒で、ただただいい曲をいい演奏で届ける“だけ”のライブだった。で、それがなによりも最高だった。というかもっと言うと、スキマはずっとこういうことがやりたかったんじゃないだろうか。

これまでもその傾向は強まってきていたけど、今回のアルバムとツアーでその感じは過去最高に極まっていて、だからこそ彼らはこのタイミングでセルフタイトルを掲げたのかもしれない。スキマスイッチの『スキマスイッチ』は、こんなにもみずみずしく、洗練され、躍動し、美しく、そしてわたしたちのそばに寄り添う音楽だった。こういう音楽に向き合えることの幸せを噛み締めた一夜だった。



●最後に。もっかい見てえ!!!