左右ともに阿形の砺波型狛犬 | 尾田武雄のブログ

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石仏や散居村、郷土史に関する事

 

(砺波市庄川町三谷 水宮社)

 

(砺波市庄川町示野神明宮)

 富山県砺波市には、富山県神社庁編『富山縣神社誌』(昭和五十八年刊)によると、神社数が一四〇社記載されている。その多くには狛犬があり、平成二七年にそれらすべての神社を参拝し、狛犬の調査を行った。氏子の少ない山間部などの神社には狛犬が無いのが二五社あった。面白いのが油田中村の神明宮は、神様が猿であるので狛犬を神社に入れると、けんかをされるので、あえてないとされている。またちなみに集落には犬を飼わないとされている。

 狛犬の多くは、神祠の合祀が完了する明治後半から昭和前期が多く建立されている。戦後も盛んであるが県外の愛知県岡崎などで制作されたものが多い。高度成長期を終えたころからも建立されるが、平成に入ると中国製狛犬が増え始める。そんな中で、地域性があり特徴的で個性ある狛犬は、明治故後半からの制作された狛犬であろう。

砺波地方は、グリーンタフの金屋石や砂岩質の井波石が採掘されるところであり、また真宗の篤い地でもある。真宗は神祇不拝とされるがこの地では明らかに当てはまらない。また造塔、起塔も本願にあらずとしているが石仏なども南砺市、小矢部市、砺波市などで約五千体もある。一生の間一千体の石仏を制作した名石工森川栄次郎などが輩出している地である。狛犬も充分に魅力的であることは想像できていた。

 狛犬に銘があるのは多くはないが、個性ある石工を一人紹介しておきたい。庄川町示野神明宮「大正十二年九月」「石工井波森野善四郎」。庄川町三谷水宮神社「大正十五年二月建立」「石工井波森野善四郎」がある。南砺市野原神明宮には「大正八年八月二十九日」「石工井波森野善四郎」。同市広安平田神社にも「石工井波森野善四郎」がある。ほかにもまだ多くあると思われる。森野善四郎作の狛犬は、ずんぐりと堂々とし、しっかりと足を地についたスタイルで首を屈め、左右とも阿形で口を開けているのが特徴である。富山市婦中町鵜坂の鵜坂神社境内にもこの狛犬がある。あまりにも類例がなく特徴的であるので、砺波型と称したい。