靴下の話をひとつ。
靴下に穴が開いたら、ツギを当てて履いている。
それでもずっと履き続けて、ノビノビになったら、棄てていた。
ところが、だ。
とっくに棄てたと思っていたボロボロの靴下が、タンスの奥に残っていた。
それが、今の自分には俄然必要となってきたのだ。
1月に足をケガして、腫れがまだ引かない。
靴も履けないほどに腫れ上がっているから、大きめのサンダルで外出する。
まだまだ素足にサンダルでは、足下が寒くて仕方がない。だから靴下を履かざるをえない。
しかし今までの靴下を履くわけにはいかない。腫れのせいで、足首が二つに分かれたような痕がつくからだ。
そこで、ノビノビボロボロの靴下が役に立つ。
ノビノビでボロボロになった靴下は、履き心地がとてもいいし、普段履いていた靴下よりも痕がつきにくい。
しかしそれでも夕方には、やっぱり足首が二つに分かれたように、痕がつくのだけれど。
どちらにしても、棄てられる運命にあった靴下が、今の自分にはとても必要なのだ。
棄てられる運命にあったり、必要とされなくなった物が、再び必要とされる。
こんなことって、他にも有るような気がする。
飛躍するかもしれないが、例えば昔に買い集めていて、存在すら忘れていたアイドルのレコードがあるとする。
いい年してそれをまた聴きたくなったりするのも、一例だろう。
実際に僕は、昔のアイドルレコードを沢山もっていた。
中には、かなりマニアックなアイドルもいて、これはお宝だとずっと思いこんでいた。そして引っ越しをする時に、中古レコード店に売りに行ったことがある。
恥ずかしい過去との訣別だ。
売値は相当な額になるに違いない。そう踏んでいた。
結果は、心に相当なダメージを受けた。
つまりは、価値がないから買い取れないという。
棄てるつもりなら、引き取ると店主が言うから、そのまま持って帰った。
いつしか世の中に必要となるかもしれない。かつてのマニアックなアイドルたちが。
靴下が、アイドルに繋がった話を一つ。