海援隊はかつてのヒット曲には媚びず、新しい曲や、売れなかったけれども心に沁み入る曲を中心に、ライブを行っています
こうした点で、懐メロフォーク路線とは一線を画していると言ってよいでしょう
そんな海援隊には、語り唄がいくつかあります
代表的なのはもちろん「母に捧げるバラード」です
しかしコアなファンとしては、ここで「水俣の青い空」を紹介したいのです
「水俣の青い空」は、文字通り水俣病をテーマにした語り唄です
原作は、石牟礼道子さんの著作「苦界浄土」の中にある、水俣病患者さんの語りです

いつか読みたいと思っていましたが、ようやく図書館から借りてきて、紐解いてみました
患者さんの語りをよみながら、このところ涙腺が緩くなっているせいもあるでしょうが、涙が止まりませんでした
外から帰ってきた子どもたちが、そんな父親をみて、怪訝な顔をしたのです
恥ずかしながら、水俣病については、教科書で習った程度の知識しかありません
ようやく「苦界浄土」を紐解いて、水俣病についての現実と、患者さんたちの辿ってきた苦しみの一端を知ったのです
水俣病以外にも、人間が作り出した社会的問題はたくさんあります
僕は学生の頃からハンセン病の療養所にいる、元患者さんたちと交流を持たせていただいています
ここで、水俣病とハンセン病を同じ目線で論じるわけではありません
それぞれの問題は、性格的に異なります
しかし、社会的問題を知り、関わってきた人間には、同じ立場としてそれを語っていく義務を背負っていると考えたいのです
人間は都合のわるいことを忘れる、やっかいな動物です
それ故に、知っている人間が外に向けて語り継がなければ、いつしか風化してゆくでしょう
石牟礼道子さんは「苦界浄土」を著し、海援隊は「水俣の青い空」を語り唄っている
それならば、自分が関わってきたハンセン病問題に対して、何ができるのか
石牟礼道子さんや海援隊には足元にも及ばない、ちっぽけな存在の自分です
しかし拙い演奏とトークを通じて、ハンセン病のことを語ることはできるかもしれない
そんなことを考えさせられた「苦界浄土」でした