詩人の吉野弘さんが、お亡くなりになりました
吉野さんの詩は、とっつきやすくてそれで尚、人の心の深淵に触れるような綴りでした

有名な「夕焼け」という詩は、かいつまんで記すとこんな内容でした
混雑している電車の中で、若い娘の前に老人が立ち、その娘が席を譲る
駅についてその老人が降りたら、また別の老人が娘の前に立つ
娘は、同じようにまた席を譲る
その老人が降りたら、また別の老人が娘の前に立つ
さて、三人目の老人が現れたとき、若い娘はどうするか…
結果、娘は席をもう譲らなかったのですが、そこから展開される人間の哀しみは、気が付かないふりをしているだけで、おそらく誰もが分かっていることでしょう
はっきりそうだと認識してしまうのが、僕自身も恐いのです
「奈々子に」は、娘をもつ父親として、そしてそれ以前に一人の人間として、自分の気持ちを代弁してくれているような気がしました
娘に多くを期待しないのは、人は一生懸命期待に応えようとしたら、自分自身をダメにしてしまうから…
杉山平一さん、塔和子さん、吉野弘さん…
大好きな詩人が亡くなるのは、自分自身の道標を失ったような気がします
こんなことが続くと、自分に問いかけます
僕自身は、小さくてもいいから誰かの道標になれるのかと