四季の移ろいと豊かな自然を友とし
花鳥風月をこよなく愛してきた日本人は、
それらのエッセンスを住宅に取り入れてきました。
そうして生まれたのが今に伝わる和風住宅です。
自然素材を豊富に用いて、その持ち味を生かす。
清楚で深い趣を秘めた魅力と優れた機能性を兼ね備えた
和風住宅のすばらしさを、今年は毎月1日毎に、もう一度見つめ直してみましょう。
「玄関」
本来、玄関とは禅への入門を表す言葉で、
禅宗寺院の方丈に設けられた出入り口にその名が付けられていました。
江戸時代には、玄関は寺院以外の住宅にも広まっていきますが、
住む人の身分により、玄関を設けることは制限されていました。
大身武家の屋敷では、玄関は身分を示す格式ある設備でした。
一般住宅に玄関が設けられるようになったのは明治時代以降で、
その構成は次第に簡略化され、現代の形へと移行していきました。
建物正面の出入り口である玄関は、内と外をつなぐ日本独特の空間です。
履き物を脱いで家に上がる場であり、短時間の来客への応対の場としても機能しています。
和風建築では木材で仕上げた式台・上がり框・取次・天井・飾り棚などが、
玄関の風格を醸し出しています。
玄関の役割上、履き物を着脱するための適度な段差、
掃除のしやすい土間・下駄箱・傘立て・コート掛けといった設備が必要とされ、
空間全体の調和への気配りが欠かせません。