『 あなた 』


こんなにも静かな夜に
どうしてあなたに逢えないのでしょう

月が輝くように
どうしてこんなにも切ないのでしょう


私は探しているの
たったひとつの答え

頭ではわかっているのに
だけど
身体があなたを忘れてくれないの

狂おしいほど淀んでいく心に
あなたがくれたサボテンも枯れてしまうわ


こんなにも爽やかな朝に
どうしてあなたは傍に居てくれないのでしょう

太陽が煌めくように
どうしてこんなにも愛おしいのでしょう

僕は探しているんだ
たったひとつの答え

心ではわかっているのに
なのに
まぶたを閉じれば思い出のあなたを映し出す

咎められそうなほど燃え上がる心に
あなたがくれたマグカップの水では足りないみたいだ


会いたいと願えば願うほど
逢いたいと言葉にできない

声が聴きたいと願えば願うほど
携帯の通話ボタンを押すこともできずに

わたしは
見つけることができるのでしょうか

掌の中で輝く小さなコインを握りしめて
あなたと暮らした日々の思い出を引きずって

僕は
見つけることができるのでしょうか

掌の中で輝く小さなコインを握りしめて
あなたと暮らした日々を忘れられないで

だから
今日も立ち寄ってしまうの
一緒に歩いたこの商店街のこのお店
なんでもない日に「プレゼントだよ」なんて笑ってくれたの

そうだよ
今日も気づけば寄ってしまうんだ
よく待ち合わせをしたこのお店
「あなたに似合うと思うのよ」なんて衝動買いしたマグカップ


だけど

わたしの幸せは
もう 100円だけでは買えなくなってしまったの

僕の幸せも
もう 105円だけでは買えなくなるね


わかってるわ 

わかっているよ

何よりも大切なものは「あなた」と暮らしたなんでもないあの日々だったってこと

わかっていたはずなのに



  ――詩集 100円玉のあのころ より 未刊――