『十番目の打席に』

  *7回表*

透は容赦なく投げ込む。
「ねぇ?こっちのフォームとさ、」
強烈なストレートが運動オンチの慎二のミットに突き刺さる。
「こっちのフォームどっちがかっこいい?」
捕球することに必死で、だけど、使い込まれた宮本浩太のミットは透のストレートを柔らかく包み込んだ。
「右」
あてずっぽうで答えた慎二に
「そっか、やっぱこっちか」
そう言って、一つ前よりさらにノビのある回転の鋭い球がミットに飛び込む。
「かまえてるだけでいいから」
そう言ったとおり、透のストレートは構えた場所に素直に届く。
「ねぇ?こっちのフォームとさ、」
強烈なストレートが運動オンチの慎二のミットにまた突き刺さる。
「こっちのフォームどっちがかっこいい?」
目を見開いて、違いを探した。
グローブの角度。
つま先の上げるリズム。
わずかに、だけど、違った。
その違いの分だけ、ミットから伝わる振動が変わる。
後者の方がミットに対するおさまりがいい。――気がした。
「今投げたつま先あげるリズムほうが、良い気がする」
そう言った慎二の声に透は言った。
「慎ちゃんくらいだよ、あんなわずかな違い、見ててくれるの」
次の瞬間、透の手から離れたボールが鋭い軌跡で視界から消えた。
慎二の後方のネットを揺らす。
透がニヤリと笑って言った。
「スライダーについてきてくれるのは、やっぱ宮ちゃんか」
「ごめん」
慎二がそう呟いた。
地面に転がったボールを拾って透に返す。
透はグローブとボールを足元に置いて、言った。
「慎ちゃんさ、なんで俺ピッチャーやってると思う?」
「コントロール良いから?」
「まぁ、それもあるけど」
慎二はしゃがんでミットを構える。
透はいつもよりゆっくりときれいなフォームをつくって、投げる真似をした。
慎二はその動きにあわせるように、ミットを閉じて捕球の真似をした。
「俺ね、」
透は言った。
「ピッチャー以外できないのよ」
「なんで?」
慎二は尋ねる。
「ダメなの。短気だから。自分以外が投げてるの想像するだけで、ウザイ」
「なんで?」
「だって、待ってるんだよ?そいつが投げんの」
透は今度はセットポジションの体勢になって。
「許せない。俺のタイミングでやりたい」
透は投げる真似をした。
慎二はミットを構えて、捕る真似をする。
透は言った。
「適材適所ってやつ。だから、慎ちゃんはスコアつける人がいいと思う」
その言葉が、なんか嬉しかった。

  つづく