『十番目の打席に』
*4回裏*
慎二はふと立ち止まって、グランドを見つめた。
全員が思い思いの練習をしている。
昨日の試合を振り返りながら、オーダー表の順番で仲間を探す。
1番センター 佐藤幸生。
1塁と2塁のベースを何度も走り続ける。盗塁の練習。
2番セカンド 山田小次郎。
ホームベース付近でバントの構えをする。
3番サード 二宮恵吾。
ピッチャーマウンド付近で、打撃マシンにボールを入れる。
山田のバント練習につきあっている。
たぶんこのあと、バックネット付近でティー打撃。
おなじみの光景。
4番レフト 栗本和則。
バックネット横にあるティー打撃用のネットでスイング中。
5番ファースト 園田尚。
ティー打撃の栗本にボールを投げる係。
さっきまで打っていたから、首から提げたタオルで何度も汗を拭いている。
6番ライト 山下信吾。
素振り中。手を止めて、あたりを見回す。
このあと栗本あたりにティー打撃を変わってもらうのだろう。
目があった。頷いてニヤリと笑う。
全員が何を考えているのか、全員が何をするべきなのか分かっているのがうれしい。
こういう瞬間に、きっと、キャプテンをやってよかったと思っているのかもしれない。
7番投手 工藤透
ブルペンでキャッチボール。
相手はもちろん、
8番捕手 宮本浩太。
そうこうしていたら、山下が走って慎二のところまで来た。
「なぁ、慎二、キム知らない?」
キムこと、9番ショートストップ木村謙次郎。
「あ、わかんない」
ふと見上げた2年5組の教室。
窓からぼーっとグランドを眺めている姿があった。
慎二の視線の先を追って、山下が木村の姿を捉えた。
「なんかあった?」
「2年生だから」
「あー、そか」
山下は頷いて、麦茶に手を伸ばす。
慎二は言った。
「あ、でもキャッチボールする約束したから、出てくると思うよ」
山下は冷たさにしびれる眉間を押さえながら言った。
「あ、それならOK」
「冷たすぎた?」」
慎二のその問いに、山下は、
「激しくひでぇ」
そう言って笑った。
「キャッチボールさ、」
山下はコップを置きながら、
「俺もまぜてや」
「俺はいいけど……」
慎二は木村の姿をもう一度見つめた。
山下はその視線の先を追う事はせずに、「本人次第だな」と呟くように言った。
つづく
慎二はふと立ち止まって、グランドを見つめた。
全員が思い思いの練習をしている。
昨日の試合を振り返りながら、オーダー表の順番で仲間を探す。
1番センター 佐藤幸生。
1塁と2塁のベースを何度も走り続ける。盗塁の練習。
2番セカンド 山田小次郎。
ホームベース付近でバントの構えをする。
3番サード 二宮恵吾。
ピッチャーマウンド付近で、打撃マシンにボールを入れる。
山田のバント練習につきあっている。
たぶんこのあと、バックネット付近でティー打撃。
おなじみの光景。
4番レフト 栗本和則。
バックネット横にあるティー打撃用のネットでスイング中。
5番ファースト 園田尚。
ティー打撃の栗本にボールを投げる係。
さっきまで打っていたから、首から提げたタオルで何度も汗を拭いている。
6番ライト 山下信吾。
素振り中。手を止めて、あたりを見回す。
このあと栗本あたりにティー打撃を変わってもらうのだろう。
目があった。頷いてニヤリと笑う。
全員が何を考えているのか、全員が何をするべきなのか分かっているのがうれしい。
こういう瞬間に、きっと、キャプテンをやってよかったと思っているのかもしれない。
7番投手 工藤透
ブルペンでキャッチボール。
相手はもちろん、
8番捕手 宮本浩太。
そうこうしていたら、山下が走って慎二のところまで来た。
「なぁ、慎二、キム知らない?」
キムこと、9番ショートストップ木村謙次郎。
「あ、わかんない」
ふと見上げた2年5組の教室。
窓からぼーっとグランドを眺めている姿があった。
慎二の視線の先を追って、山下が木村の姿を捉えた。
「なんかあった?」
「2年生だから」
「あー、そか」
山下は頷いて、麦茶に手を伸ばす。
慎二は言った。
「あ、でもキャッチボールする約束したから、出てくると思うよ」
山下は冷たさにしびれる眉間を押さえながら言った。
「あ、それならOK」
「冷たすぎた?」」
慎二のその問いに、山下は、
「激しくひでぇ」
そう言って笑った。
「キャッチボールさ、」
山下はコップを置きながら、
「俺もまぜてや」
「俺はいいけど……」
慎二は木村の姿をもう一度見つめた。
山下はその視線の先を追う事はせずに、「本人次第だな」と呟くように言った。
つづく