**シーン055 @景子
面会時間になるまであと5分。
時計を見て、「もうすぐかな」と思った瞬間に、ドアをノックする音がして、唯ちゃんが登場した。
「着替え、持って来たよ」
行雄も一緒に入ってきて、
「先生と話してくる」
と言ってまた廊下へ出て行った。
唯ちゃんの持ってきた紙袋には、長袖のTシャツとジーンズ。秋色の薄手のセーターが入っていた。
唯ちゃんは、「ラクなの、と思って……」と心配そうな顔をする。
私の好みで買ったはずの服。
――うん、悪くないんじゃない?
と自分で自分を評価する。
他人の服に袖を通す感じ。
洗いたての香りがする。おかあさんのおさがり?みたいな服。
「着替えちゃっても平気かな?」
私が聞くと、唯ちゃんは
「着替えてもらってて。って」
笑顔で言ってくれた。
すごく安心できる笑顔。
ちょっとだけ、おかあさんに似ていた。
――あ、そっか。私の娘なんだっけ?
そう思って。
――うん、悪くないんじゃない?
そんな風に考える。
今日の空は晴れていて。早く外に出たい。
そんな風に思える。
『人は、今しか生きられないから』
その言葉が私に勇気をくれた。
だから、今すぐ、25年経った、『今』っていう未来に出逢いたいじゃない。
窓の外で今日の空が、晴れていた。
つづく