『 記憶 』




   **シーン045 @唯




おとうさんは「だから………もう、関わっちゃいけないんだと思う」って言った。

台所の食器とかを片付けながらタクシーの中でおとうさんと話したことを思い出してた。

コンロにかけたヤカンの口から湯気が出始めた。

お湯がわくまで、もうちょっと。

カウンターキッチンの窓からおとうさんが居間のテレビをつけたのが見えた。

「おとうさん、お茶、飲む? コーヒー?」

おとうさんは腕まくりしたワイシャツの袖を下ろしながら、振り向いてひとこと「お茶」と答えた。

タイミングよくヤカンがシューシュー言い始めた。

最後に洗った急須と、おとうさんのコップと私のコップを並べた。

コンロの火を消して、それから、ポットに移しかえる。

急須にお茶っ葉を入れて、ポットからお湯を注ぐ。

急須のフタにある小さな穴から、湯気が小さく線になってあがってくる。

ひとつ、おとうさんの質問に答えてないのを思い出して、それから、おとうさんのコップと私のコップにお茶をいれた。




  つづく