『 記憶 』
**シーン044 @景子
夢を見てる気がした。
だから、不安になった。
42歳になってる文雄と娘の唯ちゃんが来て。
それから行雄が来てくれて。
ひとりになって思う。
――よくできた夢だこと。
ちゃんと25年経って。
私には、夫と、娘がひとり。
頭を枕にうずめた。
窓ガラスの外から車の通る音がしたり、廊下から足音が聞こえたり。
天井が真っ白だった。
もしかしたら、このまま目を閉じて、眠ったら、昨日に戻っちゃうのかも。
そう思って、わからなくなった。
自分が、吉川景子は、いつが私なんだろう?
ひとつ自分に尋いてみる。
「ねぇ? どっちの自分がいい?」
テスト直前の、17歳の私。
もしくは、42歳になった私。
「ねぇ? 景子? どっちがいい?」
選べるとしたら、どっち?
しばらく、考えていた。
答えが出そうで出なかった。
だけど、テストは嫌だな。
そう思って――、それから――。
答えはやっぱり、42歳の私だった。
だって、嬉しかったから。嬉しいから。
「景ちゃん、俺と、芝居やんねぇか?」
その言葉が、また聞けるなんて思わなかった。
退院は、明日。
つづく