能登半島北部地震(石川県珠洲市)の考察
6月19日15時8分頃、石川県能登地方でマグニチュード(M)5.4の地震が発生し、石川県珠洲市では最大震度6弱を観測した。震源の深さは13kmで、神社の鳥居が壊れるなどの被害が出た。翌20日10時31分頃、M5.0(暫定値)の地震が起きた。珠洲市では最大震度5強を観測し、午後2時50分ごろには再び震度4の地震を観測した。気象庁は能登地方での地震活動は当面継続するとの見解を示している。能登半島先端の地震は時期によってA~Dの4か所に分けられる。最近は、今回発生したD地区に集中している。能登半島先端の地質はどうなっているのか?2021年9月16日に発生した地震の調査報告書の一環で能登半島の地質と活断層について産総研に資料が有ったので抜粋する。(令和3年(2021 年)9月 16 日の能登半島の地震発生域の地質と活断層)図1.能登半島の海陸シームレス地質図.基図は,井上ほか(2010).灰色の点は 2021 年 6 月 1 日〜9 月 15 日,ピンク色の点は 2021 年 9 月 16 日〜10 月 3 日の深さ 20km以浅で発生した M0.5 以上の地震の震央分布を示す.青丸は 2019 年以降に発生した M2.9 以上の地震の震央,赤星印は 2021 年9月16日に発生したM5.1の地震の震央を示す.震源位置は気象庁一元化処理検測値を用いてhypoDD法(Waldhauser and Ellsworth, 2000)により再決定したものを使用した.図3.(上)能登半島東端部の地質断面(井上ほか,2010).図の縦横比は5:1.断面図の位置は,図1に赤線で示す.中央のほぼ垂直な赤線が活断層位置で,その左側(北側)の地層はほぼ水平であるが,右側(南側)の地層は北側に傾斜していることから,南側が隆起する逆断層であると解釈される.この断面は縦方向に約 10 倍拡大しているので,実際の傾斜はもっと緩やかである.今回の発生場所と去年の発生場所 年月日 時分秒 緯度 経度 深さ(km) M 震央地名2022 6 19 15:08 7.5 37°30.9'N 137°16.5'E 13 5.4 石川県能登地方2022 6 20 10:31 34.4 37°31.3'N 137°19.3'E 14 5.0 石川県能登地方2021 9 16 18:42 30.2 37°30.3'N 137°18.0'E 13 5.1 石川県能登地方尚、地質図2019年に更新されていたのでそれを使った。これを見ると6月19日のM5.4の地震と 6月20日のM5.0の地震は、西海断層の東側で発生している。※西海断層は、黒の線と▼マークなので確認逆断層(赤の場合は確認活逆断層)です。石川県能登半島の地震活動に伴う地殻変動は?電子基準点「珠洲(950253)」で南南東方向に1.6cmの変動日本海側から圧力を受けているが太平洋側からの圧力も有る為上下方向では「珠洲(950253)」で4.1cmの隆起が見られる。000240851.pdf (gsi.go.jp)大地2号による能登半島の地穀変動と累積地穀変動量この地震によるノイズレベルを超える地殻変動は見られないとのこと。「だいち2号」観測データの干渉解析による石川県能登地方の地震(2022年6月19日)の地殻変動【考察】1. 能登半島北端の累積地穀変動量(隆起)範囲内で地震が発生している。2. 日本側からより大きな圧力が加わっている。(観測点による影響?)3. 西海断層に沿って大きな地震が発生している。4. 西海断層の地震は、西から東に移動している様に見える。5. 大きな地穀変動が無いため、まだ内部圧力が解消されてないと思われる。 ♪その他♪日本海形成の成立ち(1)日本海形成の始まり(漸新世中頃〜前期中新世中頃:約3,000〜1,800万年前)日本海の形成が始まった時代である。地下深部から流動性のある高温のマントルが上昇することによって、ユーラシア大陸東縁の大陸地殻の一部が引き延ばされ(伸張)、正断層などが発達し大陸地殻が裂け、その割れ目を通じて地下から大量のマグマが噴き出して火山活動が活発化した(図 ①)。(2)日本海の拡大・深化(前期中新世末〜後期中新世末:約1,800〜600万年前)この時代では、さらに地殻が引き延ばされ、日本海が拡大し(海域が広がり)、ユーラシア大陸東縁であった地域が大陸から完全に分離した(図 ②)。日本海と日本列島の原型が形成された時代である。特に1,800〜1,500万年前頃、日本海は急激に拡大と深化が進んで広い海域となり、その後、深い海域の状態が続いた。能登半島北部周辺に刻まれた日本海発達の歴史~20万分の1地質図幅「輪島」(第2版)より抜粋(3)日本列島と日本海の短縮(後期中新世末〜第四紀:約600万年前〜現在)日本列島と日本海が短縮し、全体として隆起して現在の日本海と日本列島の姿になっていった時代である(図 ③)。600万年前頃になると、能登半島のほか、能登台地でも東北東−西南西方向の逆断層の発達が顕著になり、同方向の隆起帯が形成され陸地ないし浅い海となった。正断層と逆断層正断層地殻が水平方向や鉛直方向に引き伸ばされること(伸張)によって形成される断層。逆断層地殻が水平方向に押され縮むこと(短縮)によって形成される断層。なお、日本海に発達する逆断層は、日本海形成(拡大)時に形成された正断層が、その後、地殻が短縮したため逆断層として再活動していることが多い。以上です。災害の記事一覧