「ティラミスって、たまに食いたくなるよなぁ」
職員食堂に入って着席して5分後には、
ミートソーススパゲッティを見事にカラにしていた先輩。
振り向くと、私の背後ではすでに、
デザートのミルクレープとコーヒーに取り掛かっていました。
私のカツ丼はまだ全然減ってなくて、
ボヤボヤしてたらお昼休みが終わってしまう!Σ(゚д゚;)
と慌てて玉ねぎやら卵やらを口に放り込みました。
そうしているうちにあっというまに先輩は立ち上がって、
「肩いてぇ、腰いてぇ」
とボヤきながら去っていきました。
・・・そ う だ!!!
名案ぱんぱかぱ~~~~ん
その背中を見て、私、
今年のバレンタインは、ティラミスを作って先輩に渡そう!
と決めたんです。
んでまぁ、帰りにさっそく本屋さんへ。
お菓子コーナーには、思ったとおり、バレンタイン特集が組まれていて、
友チョコだの、マイチョコだのという文字が乱舞してます。
最近は、男の子よりも、女子同士でチョコを送りあうもんなんだなぁ。
チョコマフィンとか、チョコケーキとか、おいしそうな写真が沢山載ってる・・・。
いちばんわかりやすそうなレシピ本を1冊買って、家に帰りました。
ティラミスに必要なもの。
マスカルポーネチーズ、生クリーム、卵、ビスケット、ラム酒・・・etc
エプロンつけて、夜中、私は頑張りましたとも。
生クリームを、泡だて器でガンガン混ぜて、
腕イタイってわめきながらも必死で混ぜて、
こういうとき、文明の利器(機械でウィーンって泡立てられるヤツ)とか使ったら便利なんだろうなぁチクショウ、って男泣きしながら、
混ぜました。
東急ハ○ズで買ってきた可愛いハコに、ティラミスを詰めます。
コーヒーリキュールのしみこんだ台、クリームソース、の順に重ねて、
あとは一晩、冷蔵庫で冷やすだけ。
朝、家を出るときに、ココアパウダーを振りかけて、
きれいにラッピングして、
先輩に渡せば完璧です。
2月14日。朝。
朝起きるのが苦手な先輩は、
いつも朝、テンション低い。
これ、こころよく受け取ってくれるかしら。
いや、そもそも、今日遅刻してくるんじゃないかしら。
いや、遅刻どころか出勤してこなかったらどうしよう。
などといろんな懸念がありつつも、
先輩は、いつもどおり、いつものカッコで、ちゃんと出勤してきていました。
うさこ「先輩! おはようございまーす!」
先輩「お、おはよー」
寝ぼけまなこでアタマをかいてる先輩に、
「先輩に、バレンタインのプレゼントでーす!」
と、昨日の力作を、満面の笑顔で渡しました。
「おーっ! 何何。やるじゃんオメエ! サンキュな~」
と言いながら嬉しそうに先輩は受け取ってくれて、
「俺ちょうど、朝メシ食ってなかったから、これ今食っていい?」
「も・・・もちのろんでごじゃいますっ!!」
先輩はそっと包みを開けました。
先輩「・・・・・おぉっ!」
うさこ「おおお」(意味なく一緒に叫ぶ)
先輩「・・・てか、これ何?」
うさこ「ティラミスですよーーぅ! ティラミス!
・・・って、あああ!」
あーーーーーー!
ココアパウダー、振るの、忘れてた!
「ティラミスか、ありがとなー。」
ココアを振りわすれたとあやまると、
先輩は気にせず笑ってくれました。
「先輩、あまり甘すぎるものは苦手って聞いてたので、甘さ控えめに作ってます」
「おぉ、サンキュ」
と言って、
先輩は、
ひとくち、
それをほおばりました。
「・・・・にがっ!!!!!」( ̄□ ̄;)!!
「え」( ゚ ▽ ゚ ;)
目を白黒させる先輩。
「濃っ! なんじゃこれ、エスプレッソ?!」
ティラミスの茶色のスポンジ部分を、めちゃくちゃ濃いコーヒーとコーヒーリキュールで作ったので、
・・・・・それが、
濃すぎたらしい・・・。
「い、いや・・・うまい、うまい・・・よ(;^_^A、ハハ・・・ハ・・」
て言いながら、ほとんどヤケクソ的に先輩はむしゃむしゃ食べてくれて、
「うまいけど・・・、こりゃ目ぇ覚めるなぁ・・・・はっはっは」
と乾いた笑いを漏らし、
わたくし、
撃沈。
ま、それでも、カタチ的には、
「ありがとなー。ごっそさん♪」
と言いながら、先輩は出て行きました。(泣)
そして、出て行くときに、
「てか、バレンタインだろ?
ティラミスって、コーヒーで作るんだろ?
チョコ、関係なくね?」
と、振り向きもせずつぶやかれ、
・・・私はさらに・・・、
・・・絶句したのでした。
(そうか・・・・、
ココアパウダー、かけ忘れたから、
チョコとなんの関係もなくなってしまった・・・)
こうして今年も玉砕でございます。