ああ。また来たなぁ。来ちゃったよ。どうしようかなぁ・・・。
・・・というのが、私の本音でした。
って、こんなことを言ってちゃ、いけないんだろうけども。
世の中には、なかなか治らない慢性の病気というものがたくさんあります。
おとなになってから発症したアトピーというのも治りにくくて、けっこうつらいものがあります。
こないだ受診した若い女性も、治療を始めて一ヶ月くらいになるのですが、なかなかうまく治りません。
湿疹に対して、薬を塗ると治るのですが、
また別なところに湿疹ができてきて、
治る速度とあたらしくできる速度をみていると、
あたらしくできる速度のほうがはやいのです。
診察のたびに、落ち込んだような、怒った顔でやってきて、
うさこ
「どうですか?」
と尋ねると、
女性
「全然、治りません」
とため息をつくのです。
「私はなにか重大な病気なんじゃないですか?」
「なんで治らないんですか?」
「今までこんなことなかったのに、なんで次々湿疹が出るんですか?」
「もっと利く薬はないんですか?」
と、いろんな質問がきます。
その質問にひとつひとつ答えながら、
私も、内心、
(・・・・困ったなぁ・・・・)
(治らないなぁ・・・・)
(・・・・新たにまた湿疹増えたなぁ・・・・)
と、悩んでいるのです。
ほかの先生に紹介することも考えましたが、
性格的にあの先生はあわない、
あの先生もあわないな・・・、
と考えると、てきとうな先生は思い当たりません。
紹介した先で、その先生とトラブるのもイヤだし、
紹介したからといって、
慢性の病気が魔法のようにすっきり急に治るもんでもありません。
慢性の病気は、患者さん自身の生活と密接にかかわっていることが多く、
ぬりぐすりよりも、のみぐすりよりも、
生活指導のほうが大事なこともしばしば。
そういったことも話しましたが、
不信感いっぱいの目で見られ、
まいったなぁ、という状態。
うさこ
「しっかりと診断をつけるために、検査をしましょう」
と勧めても、
女性
「・・・えー・・・」
と眉をしかめています。
うさこ
「じんましんも出てきてるから、アレルゲンを調べる検査をしましょう」
女性
「・・・・」
(それもイヤなのね。)
うさこ
「じゃあ、血液検査をしてみましょうか。
内科的な病気が隠れていないか、たしかめておいたほうがいいと思いますよ」
女性
「えー・・・・」
と、なんにしろ、シブイ顔。
とにかく、検査はしたくないらしい。
私が老獪なじいさんだったら、
「君の病気はナ、○○だから・・・」
と、言葉巧みに丸め込めたかもしれませんが、
残念ながら、そんな威厳も風格もありません。
名医っていうのは、治療技術もさることながら、
患者さんとのコミュニケーションがうまいんです。
いかにして信頼を得るか、
いかにして「この先生にならついていって大丈夫」と思ってもらえるかは、
どんないいお薬よりも、
効果があることだと思います。
この患者さんのツヅキのはなしは、次回