私もねえ、まさか、こんなところで、サトミちゃんに会うなんて思ってなかったよ。






いそがなきゃ、遅刻する!!!

って、朝、いそいで走ってたときでした。


肩から提げたかばんの紐で、

自分のクビが絞まりそうになって、

こんなとこで死ぬわけにはいかん!

とか考えながら、

とりあえず必死で紐をゆるめたり、走ったり、

走った衝撃でまたクビが絞まったり、

四苦八苦してたんです。





前のほうから、おなかの大きい人が歩いてくるなぁ、

なんとしてでもあの人は避けなきゃなー、

あーどっちによけよう、

うわ、そこでどうして左に寄る!

前見て歩け、前!前!



あたるあたる。

私が右によると、

その人は引力みたいにまた右に寄ってきて、

このままじゃぶつかるじゃん、

あーよそ見しながら歩いてるよ妊婦さん!!!









って、思いながら、その顔見て、







ひっくり返りそうになりました。







「さーーーーーー!!!」










て、とおりすがりのネコが振り返ってにらむくらい、

素っ頓狂な声を出してしまいました。






妊婦さんは私の意味不明な叫び声にびくっと肩を震わせてこっちを見て、



「うあっ!」



と可愛らしい叫び声をあげました。








「サトミちゃん!!!」



私がそう叫ぶと、妊婦さんは目をまん丸にして、




「・・・っ! うさこちゃん!?!」



「そうそ! うさこうさこ!!! めちゃ久しぶり!!!」



「キャーーーッ! マジ? ほんとのほんとにうさこちゃんなのね!!?」








うがは~っ!

って、ふたりでほとんど抱き合うようにして、再会を祝しました。




だって、大学卒業以来ですよ。サトミちゃんに会うの。







サトミちゃん

「元気そうじゃーん、あいかわらずだねぇ」



というサトミちゃんは、学生時代より少しふっくらしていました。




うさこ

「サトミちゃん、いきなり妊婦さんになってるんだもん、びっくりした! あっはっは。」


サトミ

「そーなのよ、しかも第2子なんだよー」


うさこ

「エエ! 二人目!」


サトミ

「そうなの、いま、育休で産休なの」


うさこ

「えー、そうなんだ! てか、サトミちゃんこのへんに住んでるの?」


サトミ

「そうだよ、すぐそこの、カドを曲がったとこの、あのマンション」


うさこ

「おおおお! うちのメッチャ近く!!」







・・・・そこで私は、自分が通勤中であり、遅刻寸前の身であることを思い出して、

とたんにあせりだし、

とにもかくにも、おしゃべりを切り上げて、

連絡先だけ交換して、その場はとりあえず、サトミちゃんとバイバイしたのでした。


(つづく。)