お世話になっている先輩が、もうすぐ転勤なのです。
おかげで、私は、革マニアになりました。
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こないだ先輩の口から、
「俺さぁ、もーすぐここの病院やめるんだわー」
と聞いたときにはビックリしました。
優しくて、ちょっと口が悪くて、笑顔がかわいい先輩。
おしゃれで、反骨精神旺盛で、強気で、だけど時々意気地なしな先輩。
仕事帰りでヘロヘロに疲れているとき、
よくごはんを食べに連れて行ってくれました。
ひとつ年上なだけなのに、頼れるアニキみたいな、
そんな先輩が、とても好きでした。
お世話になったお礼に、なにか、プレゼントしようと考えました。
なにを送ったら喜ばれるか、それとなく身辺リサーチしたんですが、
革の小物が好きらしいと判明しました。
こないだ食堂でごはんを食べてたとき、
先輩が、レジでお金を払っているのを見かけたのですが。
「あー! 俺の財布もうヤバい、こわれかけ!」
と、年季の入ってそうな黒い財布を見つめながら、先輩がつぶやくのが聞こえました。
革財布なのですが、シワやこまかい傷がたくさんついていて、ワイヤーが飛び出し、
小銭いれのボタン止めが、きっちりととまらない状態になっていました。
ということで、これはチャンス!!!
とばかりに、革財布を送ることにしました。
・・・って、ここまではわりとスムーズにコトがすすんだのですが、
・・・・・・・・革?
よくよく考えると、私、あんまり革製品に詳しくないのです。
革のカバンをひとつ持っているくらいで、
財布もピンキーダイアンの布生地の財布だし、
パスケースもキーケースも革じゃないし。
・・・・困惑。
あたりをみまわすと、
医局でお菓子食べてる研修医君を発見。
今日もワックスでツンツンに立てたアタマがサエてます。
ちょうどいいやとばかりに、尋ねてみました。
研修医「え? 男物の財布? そりゃもう、ヴィトンっしょ!」
即答で帰ってきたのがこの答えでした。
でも、残念ながら、先輩は、そういう王道ブランドはキライっぽい・・・。
研修医「そうっすかー。パトリックコックスとかもダメ?
アー、ダメっすか。うーん。
ポーターなんて論外だろうなぁ。
そういう人って、他の人とカブるのがヤなんだもんなあ」
研修医君は、あたまをひねって考えています。
うさこ「ちなみに、ボッテガヴェネタとか、ブリーとかもダメだと思うんだよね。メジャーすぎて(というか、その前に、高すぎて泣ける)」
研修医「なんスかそれ! むずかしい人だなあ」
そうなんですよ。そうなんですってば。
先輩はブランドが嫌い、
知られざる名品、が好き。
革に関しては一家言あるらしく、すげぇコダワリ派。
素材や縫製はいいけど、でも、世に知られていない名品、が好きらしい。
よりにもよってまあ、むずかしい。
ほんとはねえ、ベルルッティとか贈れたら、最高ですよ。
ベルルッティのお財布なんて珍しいし、
他の人もあんまり持ってないだろうし。
でもあんなベラボウなお値段は、ためらってしまいます。
というか、もらう先輩もビックリするだろうし。
他にも何人かに聞いたんですが、
何某「隠れた名ブランド? それなら絶対、レッドムーンがいーよ!」
で、レッドムーンを扱ってるお店に行ってみると、
これまたちょっと違う。
ちょっとカジュアルすぎるのです。
(レッドムーンてのがアメカジらしい。)
何某「ホワイトハウスコックスなら、キレイめで、喜ばれるんじゃない?」
何某「フィーコなんてどう?」
そこらじゅうの何某に聞きまくり。
で、片っ端から、どういう製品を作っているのか調べていきました。
おかげで、革のブランド、めっちゃ詳しくなりました。
(つづく。)