ある日の午後の昼下がり、電話がかかってきました。
病棟からの電話でした。
うさこ
「はいはいー。なんでしょうかー」
と、ねむーくなりつつあるアタマでぼーっと返事をすると、
電話の向こうで、病棟の看護師さんが、
「先生、ちょっと! はやく来てよ。なんでもいーから、はやく!」
と怒鳴ってるではありませんか。
なんだかよくわかりませんでしたが、とにかく早く来いとのことだったので、椅子からガバァと起き上がり、いそいで病棟へ行きました。
うさこ
「はいー、やってきましたー」(・ω・)/
と、ナースステーションのところで声をかけると、
看護師さん
「あー、先生、ひと足おそかったよ!」(´∀`)
うさこ
「何がですか???」
看護師さん
「○○さんがさ、出血しちゃって。
どうやら寝てる間に、アシをぶつけたらしいんだ。
それで起きたら、布団が血まみれになってるっていって、えらく動揺してしまって、
ナースが心配ないって説明にいったんだけど、納得してくれなくてさー、
ドクターを呼ぼうという話になったのよー」
○○さんというのは、入院患者さんなのですが、ちょっとボケ気味のおじいさんです。
ときどき、自分が入院しているということを忘れてしまって、
ここはどこだ! 家に帰る!
などと大騒ぎしてみたり、
自分が病気であるということも忘れて、
なぜ自分は病院にいなきゃいかんのだ!
と怒り出したり、
なにやらイロイロと目を離せない患者さん。
そんなジイちゃんなのですが、
それがまた、じつにいろいろと病気もちなのです。
今回の入院では、血液内科の先生と私とで、ジイちゃんの主治医。
血液内科のほうの病名は、
「特発性血小板減少性紫斑病」
という、ながったらしーーい、めちゃ覚えにくい名前。
どんな病気かというと、
血を止める働きをする「血小板」というものが少なくなり、
血が止まりにくくなってしまう病気です。
このため、ちょっとベッドのかどにぶつけただけでも、出血してしまったらしい・・・。
看護師さん
「血液内科のT先生のほうが、うさこ先生より病棟来るの早かったから、さきに病室行ってるよ。
○○さん、自分の病気のことほとんどわかってないからさ、血を見て動揺しちゃってて。
今、T先生が説明に行ってくれてるから、うさこ先生も一緒に行ってあげて」
うさこ
「リョーカイっ」
というわけで、○○さんの病室に行くと、ちょうど、T先生が出血部分の処置をしてくれているところでした。
足の血流が悪くなって、一部、潰瘍ができてしまっているのですが、そこを運悪くぶつけたらしく、血が出ていました。
私がT先生と一緒に処置をしていると、
○○さん
「ああーーー、ありがたいこってのぅ、みんなで、こうやって、ちゃーーーんといいアンバイにしてもろうてのぅ」
看護師さん
「そうですよー、みんな、○○さんのこと、すごく心配してるんですよー」
○○さん
「それにしてもーーのぅ、こんな血ぃ出るとは、びっくりしたわい、ほんまにのぅ」
看護師さん
「そうですねー、そういう病気だからねぇ。ぶつけないように、気をつけないとねぇ」
○○さんは、そう言われて、T先生と看護師さんと私とが、寄ってたかって処置をしている自分の足をしげしげと見つめました。
○○さん
「ところで・・・・、わしゃ、病気なんかの??」(@Д@;
看護師さん
「そうですよ。だから入院してるんですよ」
○○さん
「なんちゅう・・・・病気なんかの? 病名を教えてくれんかの」(@Д@;
看護師さんは、T先生と私を交互に見ました。
うさこ
「病名は、とくはつせい・・・」
特発性血小板減少性紫斑病。
なんですけどね。
そうなんですけど、どう見たって、そんなむずかしい病名を言っても、きっとサッパリわからないだろうなぁと思いました。
T先生も同じコトをかんがえてたらしくて、一瞬、ふたりとも無言で止まってしまったのですが、
T先生
「血ぃ止まらん病です」 (←きっぱりとした口調)
_| ̄|○
_| ̄|○
_| ̄|○ あひゃーーー (゚∀゚;)
・・・・・すっごくわかりやすい。
わかりやすいけど・・・
○○さん
「なんやそれは!!! そんなけったいな病気があるのか!!!」
とってもビックリしてました。(そりゃビックリするわな)
ある意味、論文とか学会でも、
「特発性ケッショウバンゲンショウセイシハンビョウが・・・」
などといわず、
「血ぃ止まらん病が・・・」
と言ってくれたら、ものすごいオモシロイ気がします。
学術度がゼロになりそうですが。
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懲りずに読みにきてくださって、ほんとうにありがとうございます!!
はからずもひさしぶりの更新になってしまいました。
昨日の記事のコメント、たくさんいただいて、ほんとうに感激です!
ありがとうございます。
こんなヘタレなヘナチョコ記事でも、たのしみに読んでくださってる方がいるんだなぁ、とあらためて感謝の念がわいてきました。