第24回
#StardewValley週間ライティング
お題:ヘイリー、シンダーサップの森、効果音

・テイスト:ギャグなし。物語風。

UFOに出逢った姉妹
写真に偶然写りこんだUFOを探しに、ヘイリーとエミリーは森に出掛けます。そこでふたりを待っていたのは…?





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UFOに出逢った姉妹
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「げっ、UFOじゃん。」


現像した写真を手に取り、ヘイリーはつぶやいた。

「ほんとだ!小さいけれど、結構ハッキリ写ってるね。」

写真をのぞきこむエミリー。

シンダーサップの森の風景写真。空の片隅に小さくUFOが写っていた。

「ねぇ、ヘイリー!まだ森にいるかも。見つけにいこうよ!」

「えぇ、嫌よ!そんなの!」



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「ヘイリーの写真は、このあたりの風景だよね?」

結局、エミリーに押しきられる形で、ヘイリー達は、UFOを探しに森に来ていた。

「UFOなんて見つけてどうするのよ?」

「もしかしたら、昔流行った映画みたいに、宇宙人と友達になれるかも。宇宙に帰れなくて困っている宇宙人がいたら、助けてあげたようよ。」

「地球を侵略しに来た宇宙人で、私達は、さらわれちゃうかもしれないじゃない…うぅっ…もしそうなったらどうしよう…震えてくるわ。」

フラワーダンスの会場近くに、普段、見かけないものがあった。

男の子だ。

黄緑の服に、オレンジのスカーフ。ここら辺では見かけない、金髪の男の子。

「やぁ、こんにちは。」

「こんにちは…あなたは、この町の子供じゃないわよね。どこから来たの?」

「僕は、空からやってきたよ。」

「まさか…あなたは宇宙人なの!?」

驚くエミリーに、微笑む男の子。

「君たち姉妹の力を借りたくて、わざとヘイリーの写真に、僕の愛車を写したんだ。よく写ってただろう、エミリー?」

「…なんで、私たちの名前を知っているの?」

ヘイリーは驚いた。口調も、まるで大人のようだ。子供の顔をじっと見つめる。善良そうな顔立ちだ。

「君たち姉妹に、助けてほしいことがあって。それで、ここまで来てもらったんだよ。」

「あなた、不思議な雰囲気ね。まるで、星の王子様みたい。お名前は?」

「エミリー、僕は王子なんかじゃないよ。君たちと同じ、普通の男の子なんだ。ただ宇宙が故郷というだけで。僕の名前はーーーーだよ。」

「えっ?」
「…なに?」

「僕の名前は、君たちの耳では聞き取れない音なんだ。だから、好きに呼んでくれればいいよ。」

姉妹は、お互いの顔を見た。

「じゃあ、空からやって来たから、あなたのことはソラと呼ぶわ!」

こういう時に、積極的なのは、いつだってエミリーの方だった。

エミリーは普段から、スピリチュアルな世界が好きだから、憧れの宇宙人に会えて嬉しいのだろう。しかし、ヘイリーはそうではない。不信な眼で、星の王子様を観察していた。

エミリーはたずねた。

「ねぇ、ソラ、あなたはどうして、この土地にやって来たの?私達に助けてほしいことって…?」

「まず、僕の仕事から説明するね。

僕は、銀河連盟の仕事で、この星に来たんだ。

この星には、邪悪な宇宙害虫が巣くっていて、この星の人々を、闇に引きずりこんでいる。それを駆除するためにやってきたんだ。」

「宇宙害虫…!それってどんなやつなの?この町にもいるの??」

「この町には居ないよ。ただ、近隣の都会の地下には巣くっているみたい。

害虫は、地球の『黒ヤギ』や『蛇』に似ていてね。人々の心の闇に住み着いている…だから、自分たちの領土が増えるように、人々を闇に引きずりこむのさ。」

「あぁ…それって、まるで悪魔ね。」

「その通りさ、人々の負の感情が大好物で、世界が闇に満ちるように、陰に身を隠して、働きかけている。あまりにも人間の手におえないような害虫を駆除しに、僕は、はるばるこの星に来たんだ。」

「あぁ、私、そういう本、読んだことがあるわ。あの物語は、本当のことだったのね。」

ヘイリーは、まったく話についていけない。

「ふたりともこっち来て。僕の船を見せてあげる。」

フラワーダンスの会場へ手招きをするソラ。

会場は、祭りが終われば、翌年まで使用されず、誰も来ない空き地となる。

姉妹が橋を渡って、森の奥の広場に行けば、そこにはまさしくUFOがあった。

「ウソでしょ…!!!」

「ウソじゃないよ、ヘイリー、これは本当のことなんだ。」

かわいいイタズラが成功したかのように、ソラは微笑んだ。

(に、偽物で、イタズラよね…?)

ソラがポケットからリモコンを取り出し、UFOに向かってスイッチを押す。

UFOは腰の高さまで、ふわりと浮上した。

もう一度、リモコンを押すと、UFOはパッと消えてしまった!

「UFOを透明人間みたいに、透明にしたんだ。」

リモコンを操作して、UFOは、また姿をあらわし、そして音も無く、地上へ着陸した。

姉妹は、驚愕し、動転した。

「僕は君たちに、手伝ってほしいことがあるんだ。…協力してくれるかな?」

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姉妹が少し落ち着いて、話が聞ける状態になったころ、ソラは切り出した。

「そう、僕は、君たちに手伝ってほしいことがあるんだ。」

ソラは肩をすくめた。

「この船は少し壊れていてね。ちょっと直すのを手伝ってほしいんだ。

エミリー、君は宝石が好きだよね?

船を修理するために、宝石が必要なんだ。僕と洞窟に行って、一緒に集めてほしいんだ。

ヘイリー、君はカメラが得意だよね?

この船は『愛の力』で空を飛ぶんだ。

この町で、たくさん『愛』を撮影してきてほしい。その写真から、愛のパワーを抽出するよ。」

「…なに言ってるの?愛なんて、撮影できるわけないでしょ?バカみたい。」

「ヘイリー、僕は、君にとって魔法使いみたいなものさ。魔法の杖で、ほら、チチンプイプイ。」

ソラは、ヘイリーが持っているカメラに向かって、リモコンを振った。黒いカメラは、金色に変色した。

「えぇー!ひとのカメラに、なにしたのよ!!」

「僕が魔法をかけたから、そのカメラで、君は、愛を撮影できるようになったよ。」

「そんな、なに言ってるの、この子…!!」

まるで変な夢でも見ているようだ。

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またエミリーに押しきられて、結局ヘイリーは、おかしな子供の手伝いをすることになった。

「この子が悪い宇宙人だったらどうするのよ?!」とヘイリーが聞けば、

「いいじゃない、あなたは、いつも通り写真を撮るだけなんだから。」と笑い返されてしまった。

いつもこうだ、こういう時の、エミリーの勢いには、負けてしまう。

「いったいなんなのよ…」

エミリーとソラは洞窟へ、ヘイリーはとりあえず自宅へ向かった。UFOなんて見て、気が動転している…いったん自宅で落ち着きたい…

自宅の前では、サムが、いつものようにスケボーの技を練習している。

何気なく、ヘイリーはカメラのファインダーを覗いた。

すると、どうしたことだろう!サムの周囲にキラキラ輝く金色の粒子が飛んでいる!

サムが、スケボーでジャンプして、何やら技を決めた一瞬、青年の笑みと一緒に、金色の粒子が飛び散った。

ヘイリーは、思わずシャッターを切った。

「こういうことなの…?」

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牧場で、家畜に微笑むマーニー。

頭上の鶏に、話しかけるシェーン。

木陰でジャスに、本を読み聞かせるペニー。

ヴィンセントが摘んだスイセンを受け取るジュディ。

エブリンさんと、花壇の花。



ヘイリーは、ファインダー越しに、金色の粒子を見つけては、シャッターを切っていった。

カシャカシャ。効果音が続く。

「へぇ、この町って、こんな町だったんだ。」

しかし、すべての住人が、金色の粒子を出しているわけではなかった。

しかめっつらで、日光浴をしているジョージさんを、カメラ越しに覗けば、そこには紫の粒子が舞っていた。

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仲良しのアレックスを探しに、ヘイリーは山の方へおもむく。

湖の麓には、タバコをふかすセバスチャンいた。

カメラを覗けば、霧のように紫の粒子が舞っている。

湖にたたずむ青年に、ヘイリーは思わずシャッターを切った。

セバスチャンは、音に気づいて振り返える。

無断で写真を撮られたことに気付き、機嫌損ねたようだ。

「……なにをしてるんだ?」

「あんた、なに考えてたの?」

「…………は?」

「元気なさそう。…人生いいこともあれば、嫌なこともあるわよね。」

話しかけるヘイリーを尻目に、セバスチャンはタバコを捨てて、家に向かって歩きだした。

「………ウザッ…」

通りすがりにつぶやいて、セバスチャンは家に入り、扉を閉めた。


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ヘイリーは、高台からペリカンタウンを、カメラ越し眺めた。

夕方の町は、金色の粒子も舞っているけれど、紫の粒子の方が多いみたいだ。

夕暮れに染まる町にシャッターを、きる。

この日、ヘイリーは、たくさんの写真を撮った。

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「あぁ、ヘイリー!いい写真撮れた?」

洞窟の土埃で汚れたエミリーとソラが、ヘイリーを見つけて声をかけた。

「ヘイリー、私達、採掘をしたり、モンスターを追い払ったり、大変だったのよ!

それでね!ドワーフと会ったの!

宝石を譲ってほしいって、交渉をしてね。

ソラとドワーフは、宇宙の話をたくさんしてたわ!とても興味深かった!

ヘイリー、どんな1日だった?」

ヘイリーは、エミリーの土で汚れた満面の笑顔をカメラに納めた。

たくさんの金の粒がキラキラと舞っていた。

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「ふたりとも、ありがとう。これで僕は使命のために飛び立てるよ。」

フラワーダンスの広場に戻り、ソラは、UFOに宝石を詰め込んだ。

「…いい写真が撮れているかわかんない。全然、関係ない写真も撮っちゃった。」

「いいんだよ、ヘイリー。たくさん見つけてくれて、ありがとう。」

ソラが魔法のリモコンを操作すると、ヘイリーのカメラから、金と紫の粒子が溢れて、UFOを包んだ。

「…ねぇ、ソラくん。紫のオーラってなんなのかしら?紫のオーラを出している人は、大丈夫なの…?」

「ヘイリー、その疑問の答えは、自分で見つけてごらん。

君に備わった、立派な頭脳と、ハートを活用するんだ。

調べて、考えて、自分の答えを見つけるんだ。

いつまでも、誰かの言い分に、振りまわされてちゃダメさ。」

ソラは、姉妹ひとりひとりに、お別れのハグをして、UFOに乗った。

エミリーが問いかける。

「ねぇ、ソラ。私達、また会えるのかな?洞窟で教えてくれた、宇宙の形の話、続きが気になるわ。」

「君たちがいい子にしてたら、きっとまた会えるよ。自分達の使命を見つけて、まっすぐ生きるんだ。君たちには、それができるんだから。

さようなら!またね!」

UFOは、ふわりと浮かんで、どんどん高度を増し、夜空の彼方へ飛び、星海の星のひとつになってしまった。

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今日も、ヘイリーは、カメラを手に外へ出る。

まったく、なんだったのだろうか、あの出来事は。

カメラの色が、金色のままじゃなかったら、変な夢を見たのだと、勘違いをしてしまいそうだ。

カメラは金色のままだが、あの不思議な粒子は、もう見えない。

町の広場に出ると、ジョージさんが日光浴をしていて、、新しい牧場主が話かけていた。

苦虫を噛むような表情をしたジョージさん。

牧場主は、カバンから、春の野草を取り出して、ジョージに差し出す。

その野草を見たジョージさんは、顔をほころばせ、笑顔をこぼした。

「…………ふーん。」

ヘイリーは、シャッターを切った。

まさか宇宙人と出会う日が来るなんて、思ってもいなかったし、ジョージさんの笑顔を見る日が来るなんて、予想もしていなかった。

「……なにが起こるか、わからないものね。」

こんな町、退屈なだけだと思っていたけど、カメラが変われば、写真も変わるものだ。

「いい写真、撮れるかしら。」

ヘイリーは、雲が美しい澄んだ青空を、春の花が舞うこの海辺の町を、フィルムに焼きつけた。

彼女の金糸の髪が、風にたなびいて、陽光に透けていた。



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END.