※注意※
このお話はゲーム「スタデュバレー(switch版)」の二次創作です。「ラム酒」などゲームには出てこない単語・情報が出てきます。ご注意ください。全16話
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第1話_人魚のペンダントの伝承
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退屈な日常には、ファンタジーが必要だ。
繰り返す日々。
変わりたいけれど、善き変化を手にすることは、なかなか難しい。
時には、心に翼をはやし、空想の世界に思いを馳せるんだ。
この日常のすぐ隣に、思いがけないファンタジーは潜んでいるかもしれない。
そうやって、心が軽くなった時、日々の繰り返しの中に、「楽しさ」を見いだせることがある。
忘れていた大切なことを思い出し、活力となることもある。
ただ、凝り固まってしまった大人達には、それが難しい時がある。
現実だけでは、生きていくには足りない。
見えない世界への窓をつくり、可能性を示唆し、人びとを揺り動かす。
それが作家の生業であり、このエリオットが人生で成すべきこと。
そんなことを、エールをあおりながら、僕はぼんやりと思い巡らせていた。
「ハイ、エリオット。雨のスタデューバレーをいかがお過ごしかしら?」
僕の友人であり、自然と共存する彫刻家、リアが声をかけてくれた。
週末、僕は、この町唯一の酒場「スタードロップサルーン」で、友人との語らいを肴に、酒を楽しんでいる。
リアも常連であり、小説と彫刻、分野は違えども、芸術を志す者同士として話が合う。
ペリカンタウンの自然は、四季、場所、時間で、刻々と変化し、新鮮な発見とインスピレーションを与えてくれる。
芸術で生きていくということは、細く孤独な旅路であり、葛藤や、ままならない胸の内を吐露する酒もある。
人はひとりでは生きていけず、善き友が必要であり、リアと僕は、酒場で他愛のない会話に花を咲かせる、芸術の学徒であった。
「ベッドで横になっていたら、雨音に混じって霧笛が聞こえたよ。先が見えない霧雨の日も、船が安全に進んでいるといいのだけど、、」
リアと僕が乾杯をし、日々のあれこれを話していると、酒場のドアが開いた。
「あぁ、来たわよ。あなたのインスピレーションが。」
リアがそう言って、僕の後方の来客に、片手を上げて挨拶をする。
僕が振り返ると、新しい僕の友人が、はにかんだ笑顔で挨拶を返してくれた。
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つづく