夜九時ごろ、母から電話。
いつもの第一声とは違う。
何かあったなと、親戚がなくなったかとか、知り合いかとか一瞬のうちに頭を駆け巡る。
「サスケが・・・」
そうだった、サスケは三月に心臓が悪くなって、以来、薬を飲ませていたんだった。
私は、「そう・・・」といったきり、かける言葉は見当たらず、ただ話をきいた。
母によると。
お彼岸だからと、サスケと仕事が休みだった弟と墓参りをしたそう。
その時は元気だったと。
そして、夕方急に、二階に居た現在のサスケの主人である弟を廊下で大声で鳴き呼び、弟が部屋に連れて行った。
その後、様子がおかしいという弟に呼ばれ、サスケを見ると明らかに体調が悪そうで、動物救急病院へいこうと言って車を出そうとしていた直後けいれんを起こして、そんまま息を引き取ったらしい。
あっという間だったと、母は泣きながら伝えてくれた。
私はやはりかける言葉も浮かばず、電話でただ「うん、うん。」頷くだけだった。
サスケは、10年ほど前に実家にやってきたチワワだ。
前の飼い主さんが諸事情で飼えなくなった子を引き取ったのだった。
確かもう2歳を過ぎていた立派な成犬だ。
でも、初めてサスケにあった時、ちょっと力を入れ間違ったら骨が折れそうで抱くのが怖いと思うほど、小さくて華奢な子だった。
犬のくせに、吠えるときは「にゃにゃにゃわーん」という感じで、お前はネコか?と突っ込みをいれてしまうほど、猫っぽい鳴き方だった。
人が大好きで、興奮するとすぐ粗相をした。
来客がある時やどこかに行くときは、人に会う前におしっこをさせないとというくらい。
たまにしか実家に顔出さない私もサスケには来客として出迎えられ、よくおしっこをひっかけられた。
座ると、なでろと腹を出して背中をすって寄ってきて、なで始めるときりがなく催促された。
景子はサスケをよく可愛がっていたし、サスケも景子がご主人と決めているようで、いつも一緒に居た。
妹が病気で入院すると、しばらく家に居なかったことをすねたりしていたらしい。
そんなサスケを景子も愛おしく想い、闘病の支えにもしていた。
東京で闘病生活をして、そのまま実家に帰れなかった景子が、そろそろ良いかなとサスケをそばに呼んだのかもしれない。
サスケ、今までありがとう。
景子によろしく。
そちらで景子と一緒に元気に走り回っていっぱい遊んで、いっぱい散歩してね。