おちょこサイドストーリー vol.3

わたしの名前は「おちょこ」!
に決まったようだ。
響きはかわいいし、まぁ悪くない名前ね。

「わたしの名前はおちょこよ。
 よろしくね、サニーさん。はじめての犬のお友達」
先住の彼女には色々と教えてもらうこともあるだろう。
仲良くしておくに越したことはない。

「よろしくおちょこさん。はじめての小さなお友達。
 さん付けは不要よ。
 わたしもあなたのことをおちょこって呼ぶから」
彼女はとても楽しそうに尻尾を振って返してくれた。

「わかったわ、サニー。じゃぁ今日からよろしくね。」
と鼻と鼻であいさつをかわす。

サニーとの挨拶を終えてしばらくは、
ニンゲンたちチヤホヤされる時間が続いた。
その間にもサニーはこのニンゲンたちについて教えてくれた。

まずはじめに私のことをこの場所に連れてきた
男と女のニンゲンについて。

「男の方は、この群れの父親でわたしは彼のことを
 『テテ』って呼んでいるの。
 たまに遊んでいる時に手を噛んじゃうことがあるんだけど、

 それがたまらなくて…手々で、テテ。
 それから女の方はこの群れの母親。
 実質彼女がこの群れのリーダーだと私は思っているわ。
 何か気になることがあったら彼女を頼ることね。
 彼女のことは『ママ』って呼んでる。
 ニンゲンの子どもたちがそう呼んでいるから
 私もそう呼んでいるの」

「男の方にもニンゲンの呼び方があるんじゃないの?」
と聞いてみると
「男は『パパ』って呼ばれているわ。
 でもわたしは『テテ』って呼んでる。
 だって見てよあの手… 見てるだけで…」
と舌なめずりをしてみせた。

 

あの男のニンゲン、ペットショップでだけではなく、
自分の住処でも手を噛まれているのか?


「それから二人の小さいニンゲンは男と女のニンゲンの子供で、
 大きほうを『アネ』、小さいほうを『イモート』って呼んでいるわ。
 これもニンゲンの呼び方からそう呼んでいるのよ」

そうこうしているうちにテテが私の住処を用意してくれたようで
小屋に案内をしてくれた。

私があのペットショップという場所で
暮らしていた小屋と同じものを用意してくれたようだ。

住心地がこれまでと変わらないのはとてもよい配慮だわ。
と思ったら、なんだろう?
なにか見慣れない物が小屋の真ん中に置いてある。
アレはちょっと様子見ね。
ひとまず他の所を一通り見ておこうかしら。

まず大事なのは『カラカラ』と私が呼んでいる
私が走ると一緒に動いていつまでも走れる魔法の道。
試しにちょっと走ってみようかしら。
…うん。これは前の小屋のにあったものと全く同じね。

次にごはんの器。
うん。食べやすい大きさだわ。
この砂風呂も
なんなら前のものよりも広くていい感じ。

すると突然アレが私の頭上に覆いかぶさるようにやってきた。
小屋の真ん中にあった見慣れぬアレだ。

どうやら私が近づかないことを見て

テテが私に寄せてきたようだった。
これはきっと私の家になるものなんだわ。
それの中に入らされて気がついたが、
少し私の趣味ではない形だったのと、
この家があることで小屋がとても狭くなりそうだったため
遠慮させてもらうことにした。

ん?
それにしても足元が少し冷たいわね…
って床が水浸しなんですけど?
えっ!?
テテ様よ。
わたし魚じゃないんで、こんなに水はいりませんよ。
ちょっとまちがえておられませんか?

 

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※この記事はハムスター「おちょこ」の気持ちになって書いたフィクションです。
 実在の人物や団体などとは関係ありません。