今日もいいお天気ですね。ノッティが一番大変だった手術歴

について綴りたいと思います。ノッティは、本当にこんなにも

大変な思いをしましたが、頑張ってくれました。




 2007年3月28日…。この日のことは私たちは決して忘れま

せん。ノルウッド手術とグレン手術を同時に行った日です。


 この日を迎えるまでには、

2006.11.21 両側肺動脈絞扼術(バンディング手術)

2007. 1.16 カテーテルによるBAS(心房中隔裂開術)に

       よる、心房中隔形成術

       ※カテーテルの先に風船を付けて膨らませて引っ張る
       チアノーゼがみられるため、酸素療法開始    


    3.13 カテーテル検査



を経たのでした。心室の動き、弁逆流、動脈管の状態に

ついても観察し、左心低形成症候群による「心不全」

「チアノーゼ」が認められていました。


 これらの手術・検査によって、「肺血管抵抗」「側副血行」

などを精密に調べました。場合によってはカテーテル中に

側副血管に対してはコイル塞栓を行うかもしれないと

いわれましたが、行わずにすみました。



 事前に、手術や検査の説明を聞きながら、同意書に署名

しました。カテーテルは小児科(循環器)の先生方で行うの

ですが、手術は心臓外科小児班の先生方が行うのです。


 執刀医M先生からの治療・検査の説明書に基づいての

ご説明は、本当に詳細明確で、しかも、わずかでも起こり

うる可能性については全てが活字で記載の上でのご説明

だったので、このことがおこったならば本当に大変だと

背筋が寒くなったのを覚えています。



執刀医M先生の手描きのノッティの心臓(2007.3.19説明時)
すべての写真はクリックで拡大画像となります。

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左心低形成症候群の特徴がわかります。

(右室型単心房単心室、小さい左心房、痕跡的な左心室、

2mm以下の上行大動脈など)


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ノッティの手術は、胸骨再正中切開下、人工心肺下、

心停止下に、

1.ホモグラフト使用の体心室流出路作成

2.心房間交通作成

3.グレンシャントを行った。

※ホモグラフトとは、心臓や肝臓などのいわゆる「臓器」に属さない、

心臓弁や血管などを組織のことです。


T大学病院のパンフレットより抜粋

 この組織をヒトからヒトへ移植することを同種組織移植

(以下組織移植)といいます。日本では現在、組織移植と

して心臓弁・血管・膵島・皮膚・骨などの移植が行われて

います。こうした組織は、臓器移植と同様に亡くなられた方

(心停止ドナー)およびそのご遺族の崇高な意思の元、

組織移植が必要な患者様のためにご提供いただいています。

脳死下臓器提供とは異なり、心停止後、ご遺族の同意のみ

でご提供が可能です。


 ノッティのノルウッド手術には、T大学病院が同種組織を

採取・保存管理する専門の組織バンクを用いた先進医療

の方法で行いました。


 「凍結保存同種組織(同種心臓弁)」に関する説明書による

と、欧米では市販されており簡単に入手可能だそうですが、

日本ではいまだに市販されていないそうです。T大学病院

では、その確保のために組織バンクを立ち上げたそうです。


 同種心臓弁の耐久性は15~20年、抗血栓症に優れ、

抗凝固剤(ワーファリン)の術後の服用は不要、抗感染性

は高く、入手は提供者不足のため困難、健康保険の適応なし

というものです。人工弁のよさはもちろん認識した上で、比較

検討し、私たちはこの先進医療でのノルウッド手術方法を

希望したのでした。ノッティには「弁」として使ったのでは

なく、この組織をパッチとしてあてがい、大動脈の再建に

使わせていただきました。


 そういうわけで、ノッティの身体には、亡くなった方の

ご意思でいただいた組織とともに生きているのです。



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手術中に必要とする人工心肺についての説明書


・輸血に関する同意書

 同種血輸血・・・赤血球MAP(人赤血球濃厚液) 6単位

        ・・・濃厚血小板 10単位

        ・・・新鮮凍結血漿 6単位


・特定生物由来製品(血漿分画製剤等)使用説明・同意書

 血漿分画製剤等が必要になると思われる事柄

  手術に伴う出血、その他出血、浮腫(むくみ)、腹水、

  造血機能低下(貧血、血小板数低下)、擬固因子低下、

  その他


・使用する可能性のある血漿分画製剤等の種類

 アルブミン製剤、免疫グロブリン製剤、

 凝固因子製剤・フィブリノゲン製剤・トロンビン製剤

 アンチトロンビンⅢ製剤、その他


・麻酔の説明同意書

 全身麻酔についての必要性と危険性についての説明。

 モニター装着(心電図、血圧計など、観血的動脈圧測定と

 動脈血酸素飽和度)を行う

 点滴確保(手足の静脈にビニールの細い管を入れる)

 麻酔薬で眠ってから挿管し、術中は気管チューブ換気。

 手術終了後は覚醒せずに気管チューブを入れたまま手術室

 よりPICUへ移動



 


 生まれてから、PICU(小児集中治療室)で看護されていた

ノッティが、一般病室に移動になり、おちょうの付き添い入院

を開始したのが、1月22日でした。それから、前日の手術準備

でPICUに送り出した日(3/27)まで一緒に付き添っていました。


 2か月もの間、病院で生活していると、いろんなことが見えて

きます。看護師さんや同じように付き添い入院をしているママ

さんたちとの情報交換など、いろんな経験をさせてもらい

ました。


 手術前日の3/27の13時半に病室からPICUに移動の予定

でしたが、緊急で心臓移植手術をしなければならない別の

患者さんが出てきそうだということで、そちらを優先しなければ

ならないとのお話を聞かされ、ノッティは手術延期になると

言われました。もし、延期の場合はどれくらい待たされるのか

と心配になりましたが、結局は、心臓のサイズが合わなかった

とのことで、その患者さんの手術はできないとのことでした。


 PICU入室は15時半となり、準備が出来次第の面会となり

ました。面会ができるとの連絡を受け、入室したところ、

ノッティには挿管、点滴ライン確保、麻酔で眠らされていました。

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2007.3.27PM5時20分撮影

 胸の縫った傷跡は1回目のバンディング手術時の胸骨正中

切開を行ったあと。

 前髪は手術中に脳の様子を見るために付けるモニターの

ためにスパッと切られていました。



 2007.3.28AM7時35分、手術前の最後のPICUでの面会し、

お見送りをしました。


 控室で待っている間も皆から「絶対に、帰ってこい!!」

両親、ご親戚、友人たちからも、念を送っていただきました。


 控室で待っている時間は、何とも言えない気持ちでした。

何かをするということもなく、ただひたすら無事、手術の成功

を祈るしかありませんでした。おちょうの母乳が出続けている

のだから、きっと大丈夫!と信じて、手術後にノッティが

たくさん飲めるようにとせっせと搾乳して待っていました。


 


 2010.3.28のブログ記事にも少し書きましたが、この手術は

8時開始で予定される手術時間は8時間との説明を伺って

おりましたが、手術してからの血液循環がスムーズに流れず、

血管圧が高すぎて、PICUに帰れないという事態でした。


 原因がわかって、再手術を免れたものの結局、15時間にも

及びました。面会はなんとかPICUに戻ってきてから、処置が

終わってからということで、控室に連絡が来たのは日付が

変わるころでした。



 2007.3.29AM0時21分、面会しました。上半身をいじると、

パンパンにむくみどす黒い状態に誰でもなるとの説明を受け

ましたが、初めて見るわが子の様子に、本当に助かったのか?

手術はうまくいったのか?大丈夫なんだろうか?いくつもの

疑問と不安な気持ちで、こみ上げてくる想いを抑えながら、

先生に感謝の気持ちと胸の内をお話しました。



 心臓が腫れているので、胸を閉じることができなかったと

伺いました。滅菌ガーゼにたっぷりのイソジンを染み込ませて

テープで張って胸をふさいでいます。


 状態は安定しているとはいえ、手術後24時間が一番危険

だということで、この日は控え室に泊りました。


 胸が閉じられないということで、バイ菌感染が本当に心配

でした。結局、この胸は5日間、開けたままでしたが、感染

することもなく無事に閉胸することができてホッとしました。



 それからは、時間の経過とともに少しずつ回復していき、

一般病棟へ移動し、2007.5.19退院となったのでした。

ノッティが生まれてから、実に半年もの間、入院していま

したが、ノッティは本当によく頑張ってくれました。おそらく、

おちょうやパパには耐えられなかっただろうと、話をして

います。



 <退院時の酸素>

在宅酸素1L/分 24時間


 <退院時処方されたお薬>

・ジコシン・・・強心剤

・ラシックス&アルダクトン・・・利尿剤←様子次第で打ち切る薬

・レニベース・・・降圧剤

・アスピリン・・・抗血小板剤

・アンギナール・・・抗血小板剤

・ドルナー・・・肺高血圧(下げる)

・ラックビー…整腸剤←必要時