しかし大納言は、
「子供のことを心配していないわけではない。しかし、この屋敷が無くても路頭に迷うことにはならないだろう。私が長く中納言の位にいた、その身分相応には娘たちを世話しなさい。遺産が足りなくなっても、他の兄弟が面倒をみてくれるだろう。越前守、私の変わりに姉妹の世話をなさい。
それから、三条邸がうちの家だって?とんでもない!本来は女君の持ち物だ。
大将殿も、私が少しばかりの気のきいた品を残すことなく死ねば、『大したことのない者だった』とお思いになるだろう。もう、何を言おうとお前に家は残さない。今日明日とも分からないこの身を恨んでくれるな。
しゃべらせないでくれ、苦しい」
と言うので、北の方はまた文句を言おうと口を開くが、子供達があつまってきて止めたので、何か言うことはできなかった。
* * * * *
大将に恩を返すことばかりを考える大納言は、北の方の不安が耳に入りません。
きっと息子たちがよく世話をするだろう、それ相応の生活はできるだろう。
なら、他の物は特に持っておく必要はないだろう。
・・・これが、大納言の思考回路のようです。
ずいぶん楽天的ですね。
さすがというか何というか・・・。
怒りがおさまらない北の方がさらに追撃をかけようとしますが、子供総出で止められてしまいます。
七人産んでおいてよかったですね、さすがの北の方も七人いれば止められるようですから・・・。
↓何かに寄生しないと生きていけないのです
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