- そのころ、右大臣(大納言の父)は
- 「老いてゆくこの身に、衛府司(えふづかさ・・・近衛府の長官、宮中の全ての兵を率い、天皇を警護する)は耐えられない。若くて華やかな青年がつくべき役職だ。」
- と言って、右大臣と兼任していた大将の職を、大納言に譲った。大納言の意思が全て通る世の中だから、誰が邪魔をしようか。
- こうして大納言は大将の職をも兼任し、大納言の地位が華やぐこと限りない。舅である中納言も、栄えある婿の出世を前にも増して嬉しく喜んだ。
- 大病ではないが、中納言は寝ても覚めても体調を崩すようになってきた。
- 女君はそんな父の容態を聞いて、
- 「法華八講をあんなにも喜んでくださっていたのに。いま少し孝行をしたいと思っていたのに、今しばらくは命を長らえて欲しいわ。」
- と神仏に祈りを捧げた。
- * * * * *
- 右大臣は華やかな大将の職を大納言にゆずりました。
- 大将という役柄、天皇と内裏の護衛をし、派手で華やかな職なのですが・・・いかんせん、もうお年で脚気もちの右大臣には勇ましすぎてついていけない仕事でもあります。
- それを大納言にゆずったものですから、大納言はますます華やかな職を得たことになります。
- 一方、婿の出世を喜ぶ中納言は、老衰で命も長くはないようです。
- 親思いの女君は、父のために必死で祈っていますが・・・
↓今回、やけに「はなやか」という単語が出てきたので。
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