北の方の一行は、やっとのことで家に帰り着いた。
屋敷に車を寄せると、北の方は人に寄りかかってしばらく目を泣き腫らして降りると、源中納言は驚いてしまった。
「どうしたというのだ。何故泣いているのだ。」
と言えば、北の方は「こんなことがあったのです」と中納言に申し上げた。
中納言はひどく情けなくなって、
「なんという恥だ。法師になってしまいたい。」
と言うけれども、残される妻子が哀れで出家をすることもできない。
さて、世間ではこの事件を面白おかしく騒ぎ立てたので、やがてこの話は衛門督の父親の右大臣の耳にも入ることになった。
「衛門督、噂は本当なのか。『女車にひどい乱暴をはたらいた』と聞いたぞ。その乱暴者のうちに、あの二条の屋敷の者がいたと聞いたが、どう思うか説明しなさい。」
* * * * *
いじめる衛門督も衛門督ですが、夫に告げ口をする前にわざわざ目を泣き腫らす北の方も北の方です。
本当に泣いてしまったのかもしれませんが、北の方ならわざとな気がします。
さて、傍に人の無きが若し、人目をはばからぬ行いをしてきた衛門督ですが、あまりの派手で理不尽なことに、とうとう父親に事の真相を問いただされています。
さすがに、なんでもやりたい放題が通じるわけではないようです。
さて、「女車」に乱暴をしたといったら、大変な恥知らずです。
衛門督はどうするのでしょう?
↓そんな衛門督に。
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