大阪国際女子駅伝、別府大分毎日マラソンそして、東京マラソン、名古屋と大きなマラソンが目白押しで、箱根駅伝の余韻もさめてきたころだと思います。

 この「箱根駅伝の残像」のシリーズも今回でそろそろ最後にしようと思います。

 

 走っている選手の後方につく監督者、要所要所で指示を与え、時に叱咤激励します。テレビで見ている我々は選手の1Kごとのラップや、前後の選手のタイム差、優勝争いからシード権争いまで手に汗握る展開をデュアルタイムで見ることができます。

 もちろん、監督者でも後部座席に座っているマネージャーが随時情報を集めて、監督に伝え、監督は具体的な指示を与えます。テレビで見ている我々と同じ様に手に汗握る展開を見ながら戦略を立てているのです。

 しかし、PCはもちろん、スマホもなく、テレビ生中継もない時代でも、大学ごとに自衛隊のジープがぴったりついて、指示を与えていました。

 スマホがなく、外部との連絡もとれず、情報も瞬時にはわからない状況でどのように指示を与えていたのでしょうか。

 ここに今では考えられない各大学の工夫があるのです。

すべての大学を知っているわけではありませんが、自分の体験を披露しましょう。

 

 箱根駅伝全区間の全コースにこれまで蓄積してきた計測ポイントがあります。路上には距離表示があるわけではありません。もちろん5K地点、10K地点などの大雑把な距離表示はあるものの、〇〇交差点歩道橋下で〇K地点、〇〇小学校校門前で〇K地点といった細かいポイントがあって、そこを通過するタイムで選手のペースを把握して、上げ下げの指示を出します。

 このポイントは、非常に細かく、誰が何年に〇〇分〇〇秒で通過したなどのデータがあり、それとの比較でペースを把握します。

 問題は、前後のチームとのタイム差です。詰められているとか離したとか、今のテレビ中継のような細かい表示は存在しません。

 そこで、先ほどの各ポイントに部員を配置して前後とのタイム差を測ります。そして、東京にある情報基地(マンションの一室)に電話で報告します。

 このときに通過する他大学の選手の表情や疲労具合などをいっしょに報告します。

そして、次のポイントに配置された部員が情報基地に電話をして、その状況を聞いてメモを作り、伴走車が通過するときに、全力疾走で走って手渡します。

 ラジオ中継の内容もチェックします。

 こうして、伴走車のマネージャーと監督は状況を知るのです。

各ポイントに部員を配置するために長距離だけではなく他の部員、OBが動員されます。まさに総力戦なのです。

 

 とかく、選手あるいは補欠となった選手のドラマが主役のように思われますが、実に多くの人たちが見えないところで関わっていることを背負って選手は走るのです。