女子バレーで全日本の真鍋監督がタブレット片手に指示を与えていたのが、だいぶ前。サッカーでも野球でもベンチに選手でも監督でもないデータ解析をしているスタッフが必ずいます。また、ベンチではなくとも観客席から全体を見ているスタッフも必ずいるはず。例えばラグビー。多角的な情報をベンチに供給しているのは今や当たり前の光景です。

 これもいわゆる「データサイエンス」の一つの分野だといえるかもしれません。

思えば、息子の高校野球の時も決してスカウトで選手を集める強豪校でもなく、普通の公立高校ではありましが、夏の県大会でベスト8に進みました。その裏ではベンチメンバーから外れて裏方に回った3年生たちが、次の対戦校の試合を実際に見て選手のデータを集めて、オーダー編成や戦術に反映させていたようです。

 

 箱根駅伝でも監督者の後部座席に座るスタッフが携帯片手に状況を遂次監督に伝える姿があります。

 

 各大学の選手については5000m、10000mの持ちタイムはもちろん、ロードレースや大会での実績などのデータベースを蓄積しているはず。

 ただ、テレビで見たり事前の記事などを見る限り各大学の選手の持ちタイムや実績から、優勝候補、シード権争いを予想して盛り上げていますが、実は情報というの生ものであり、特に人間に関わる情報は日々更新されているはずです。

 持ちタイムや実績は、それがいつ、どこで出たものかによって当てにならないものも多いのです。われわれ年配者が若いころの写真を見せられて胡麻化されるように、大事なのは今もしくは今に一番近い情報なのです。

 各大学の情報は、春のトラック、夏合宿、出雲駅伝、(箱根予選会)、全日本、そして上尾ハーフなど各大学が選手選考の参考に使うハーフマラソンなどで収集され、12月10日の登録選手発表をもって戦力を想定します。

 昔は12月10日の発表時に区間も発表していたので、実戦に近い情報がある程度得られましたが、今は区間が寸前まで公表されません。

 実は、ここから箱根駅伝当日までの1カ月弱が大きな意味を持ちます。従ってこの期間の情報は各大学とも外に出ないように神経質になります。

  私の時代のエピソードですが、練習でロードのタイムをとっていたところ、いきなりラップタイムが読み上げられなくなりました。おかしいなと後で聞いてみると、他大学の関係者が木陰から様子を見ていたというのです。そんな昔のスパイ映画のようなことが実際に行われていました。

 

 マスコミでは注目選手や中心選手などの特集を組んだりして取り上げますが、実際に蓋を開けてみるとメンバー交代が行われて補欠に回ったり、人が変わったかのように走れなかったりすることはよく目にする光景です。この1カ月弱の期間の状況は本番に大きく影響するのです。

 今年で言えば中央大学で選手の多くが発熱したり、他大学でも期待の選手が故障していたり、体調不良だったり、結構重要区間で計算通りいかなかった大学は多いように感じました。

 それだけ、この期間は想像以上に大事な時期なのです。というより、この時期は情報戦はすでにおおかた終わっており、他大学がどうのうこうのではなく、自らのチームをいかにイメージ通りに仕上げるか。 

 他大学を気にするようではかえって危ういといってもよいのではないかと思うわけです。