「学問のすすめ」七編に「役人の不行き届」が記されている。今回の一連の訴訟問題と関連させ、解説したいと思う。

 (前略)たとえば役人の不行届きにて国内の人かまたは外国人へ損亡を掛け、三万円の償金を払うことあらん。政府には固より金のあるべき理なければ、その償金の出る所は必ず人民なり。この三万円を日本国中凡そ三千万人の人口に割付くれば、一人前十文ずつに当たる。役人の不行届十度を重ぬれば、人民の出金一人前百文に当たり、家内五人の家なれば五百文なり。田舎の小百姓に五百文の銭あれば、妻子打寄り、山家相応の馳走を設けて一夕の愉快を尽すべき筈なるに、ただ役人の不行届のみに由り、全日本国中無辜の小民をしてその無上の歓楽を失わしむるは実に気の毒の至りならずや。人民の身としてはかかる馬鹿らしき金を出すべき理なきに似たれども、如何せん、その人民は国の家元主人にて、最初より政府へこの国を任せて事務を取扱わしむるの約束をなし、損徳共に家元にて引き受くべき筈のものなれば、ただ金を失いし時のみに当って役人の不調法を彼是と議論すべからず。故に人民たる者は平生よりよく心を用い、政府の処置を見て不安と思うことあらば、深切にこれを告げ遠慮なく穏やかに論ずべきなり。(後略)


 9月16日の各新聞茨城版には「指名外し恣意的が推認される」との文言が見られる。客観的資料、様々な証言をもとに裁判所が出した判決はご存知の通りである。この裁判で裁判費用、金利を含め、古河市は2千万円を越える賠償金を支払う事となる。

 私は合併当初より取りざたされていた一連の入札問題、談合問題についてこれまで何度か議会で取り上げてきたのであるが、執行部の行う入札が「恣意的」と裁判所にまで言われてしまうことは本当に情けなく思うしだいである。

 昨日、この判決を控訴するとの通知を頂くと同時に、臨時議会の通知も頂いた。日時だけ(10月26日(火曜日)午前10時)が記されており、内容は明らかにされていないが、総合的文化施設の予算と、もしかしたらこの判決に伴う賠償金の仮執行に伴う補正予算が計上されるかも知れない。

 10月1日号の広報古河の人口と世帯でこの賠償金約2000万円を割ってみると、市民一人138円、5人家族なら690円である。このお金は市民が払うべきものか、それとも「恣意的」に入札を行った関係者が道義的責任も含めて支払うべきことなのかもしっかりと議論してゆきたいと思う。

 貝のように口を閉じ続けている議員の方々も、そろそろご自分の意見を言うときが近づいていると思う。