今朝、古河第二小学校の入学式に参列させていただき、子供たちを前に「うさぎと亀」のお話をさせていただいた。
来賓祝辞とは皆さんもご存知であろうが、聞いていて嫌になる時間のことである。学生の頃は「早く終わらないかな」と思うことが多く、殆んどの話を覚えていないが、一つだけ記憶に残る名演説があった。
それは私が高校に通っていた頃、学園の理事長先生が何かの会合で祝辞をされた時のことである。
理事長先生は「かーちゃんを大切にしろ」とだけおっしゃってすたすたと演壇を降りて行かれた。
又、ある年の体育祭では「ケガしないよーにやれ」とだけのお話。あっけに取られる教職員と対照的に我々生徒達からは賞賛の拍手喝さいが起こった。
私達が高校在学中に理事長先生が亡くなられ、先生の銅像が中庭に立てられたのであるが、ある時、上手に編まれた花輪が先生の頭の上に載せられていた。
誰もそれを取り除くことはなく、その花輪は一日中先生の頭の上にあった。
だれのいたずら(?)か分からないが、然し心なしか先生は喜んだ表情のように思えた。
奇をてらうことだけが全てではないが、時として人の心に残る言葉とはえてしてこの様な飾り気のないものなのである。
駆け足の早いうさぎの後姿も見えない亀の心の内は、今現在、一筋の光も見えない泥沼にはまった日本のそれと同様であろうが、その辛い時こそ努力を怠らずに、しっかりと一歩一歩歩み続けることが何よりも大切である。
本日ご入学された子供たちに幸多からん事を願って筆を置くこととする。