新人のセラピスト君たちに、ボチボチ仮免が発行されたらしい。朝食のテーブルに着くときに、スケジュール表を見ると、チラホラ新人君たちの名前が散見されるようになった。もちろん、仮免が出てすぐに独り立ちというわけにはいかない。一人でも施術できるか、厳しいチェックが行われる。しかも、患者ごとにチェックされるので、ある患者はOKだけれども、ある患者はやり直し、という結果になったら、OKの患者しか一人で対応することは許されない。よくよく考えれば、患者ごとに症状も違えば、リハビリのメニューも違うので、10人の患者がいれば、一つ一つのケースでチェックするのは当然である。

作業療法士の新人君が私を担当することがないということは、前から分かっていた。右手の「hand」の部分だけがリハビリ対象というのはレアケースで、かなり難易度の高い応用問題だから、新人君には荷が重いということらしい。一方で、理学療法の方は、すでに杖なしでも歩行できるし、あとは機械を使った筋トレだったりするので、もしかしたら私を担当することがあるかもしれない、とも言われていた。

で、今朝、スケジュール表を見たら、新人君の名前が入っていた。こういうのは、患者であってもワクワクするもので、時間になって先輩セラピストと一緒にやってきたときに、「テストだから、患者としては転倒したりした方がいいの??」と訊いたりしたのだが、「勘弁してください」と緊張感丸出しの様子で断られたので、おとなしい患者役に徹することにした。この新人君は、普段から気さくでよく話しかけてくるのだが、やはり緊張からか、いつもよりも口数が多く、しかも少し早口で、高齢の患者さんだったら聞き取れないのではないか、などといらぬ心配までしてしまった。

それよりも何よりも、機械を使ってのリハビリだったのだが、新人君が機械の操作を知らず、なぜか患者の私がやり方を教えるというハプニングが発生し、緊張感はクライマックスだった。はてさて、彼は私のリハビリに合格したのだろうか??もし、次にスケジュール表を見たとき、私のところに名前があれば、「合格」ということが分かるのだが、そうでなければ…。幸運を祈ることにしよう。

仮免は、順番に発行されるので、もちろんまだ施術には入れない新人君たちもいる。徐々にチェックを受ける新人君たちが増えていく中で、いつまでも見学では気が気でないだろ。そういう新人君の一人に訊いてみたら、やはりそのようで、毎朝、郵便のチェックは欠かさないと言っていた。しかも、彼女は実家から通っているので、新聞や広告に紛れて、重要なハガキを捨てられてしまったかもしれない。こうなると本人以外の家族全員が容疑者である。疑心暗鬼に包まれるわけである。不穏な空気が立ち込めているに違いないのである。是非とも、彼女の家庭の平和のために国家は早く仮免を発行してほしいものである。